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UPDATE|2022/10/28

【何観る週末シネマ】スペインを舞台に自由恋愛を描いた画期的なインド映画『人生は二度とない』

『人生は二度とない』(C)Eros International (C)Excel Entertainmen

この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、10月28日(金)公開、学生時代の仲良し3人組が1人の結婚を前にスペインに旅に出るロードムービー『人生は二度とない』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】『人生は二度とない』場面カット【7点】

〇ストーリー
大富豪の娘との結婚を目前にしたカビール、金融ブローカーとして多忙を極めるアルジュン、皮肉屋のコピーライター・イムランの学生時代の仲良し3人組は、カビールの独身さよなら旅行として3週間のスペイン縦断の旅に出る。仕事で成功を収めて、不自由なく生きているが、それぞれが悩みや葛藤を抱えていた3人。しかし、道中の出会いや冒険が、彼らに人生の意味を問いかけ、やがて本当に大切なものを見出していく。

〇おすすめポイント
『鼓動を高鳴らせ』(2015)や『ガリーボーイ』(2019)など、インド映画界において、新たな切り口を提示した監督であると同時に、2000年代から2010年代にかけて、女性の活躍の幅が広がる手助けとなった映画人のひとりであるゾーヤー・アクタルによる2011年の作品が、一般劇場公開(以前、『人生は一度だけ』というタイトルで、限定公開されていた)されることになった。

今作はリメイクではないものの、物語の着想元となっているのは、『ハングオーバー!」シリーズ。結婚を目前にした若者が男同士で外国旅行をするロードムービーである。こういったテイストの作品は、今でこそインド映画の中でも増えてはきたものの、当時としては、なかなか斬新なアプローチであった。

全く無かったわけではないが、この頃はまだキスシーンへの偏見が強かった時代。『007」シリーズのキスシーンもカットしていたくらいだ。そんな中で、キスシーンを多用したのは、かなり冒険的でもあった。

単にキスシーン自体がどうというわけではなく、それを自由恋愛の象徴として、保守的な概念や価値観からの脱却を試みている、つまりその先にある若者と海外文化との密接なリンクを透かしてみせているのだ。

それを独立系作品や自主映画で、知名度のない俳優を使って行うのであれば、それほどうるさくはないと思うが、インドでは多くの人が観ると思われるリティク・ローシャンやカトリーナ・カイフというビッグスターを起用して、ボリウッド映画でそれをやってのけたはゾーヤー・アクタルの勇気と、女性や若者の映画人の先を見据えたビジョンがあってこそ。

またスペインを舞台にした作品も珍しい。インド近辺のスリランカやバングラデシュなどが舞台になることも多いし、アメリカやイギリス、中国が舞台になることもあるが、スペインというのは画期的だ。実際に今作の影響でスペインへの旅行者が増えたらしい。

また『ガリーボーイ』にも出演していたカルキ・ケクランもメインキャラクターとして出演している。最近は『Bhram』(2019)や『メイド・イン・ヘヴン~運命の出会い~』(2019)といった、ドラマシリーズに多く出演しているベテラン女優となっているが、そんなカルキ・ケクランの初々しい姿を観られる作品としても注目だ。

〇作品情報
監督:ゾーヤー・アクタル
出演:リティク・ローシャン、アバイ・デーオール、ファルハーン・アクタル カトリーナ・カイフ、カルキ・ケクランほか
原題:Zindagi Na Milegi Dobara/2011年/インド/ヒンディー語/シネスコ/153分
10月28日(金)公開

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