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UPDATE|2023/07/04

大人も唸るストーリー展開…55周年『ウルトラセブン』が残した人類への警鐘

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2022年に公開された映画『シン・ウルトラマン』から遡ること55年。数多くの異星人と戦う姿で、子どもから大人まで幅広い層から支持された『ウルトラセブン』は、単純な異星人退治の物語では収まらない示唆に富んだストーリーで人気を博した。数多くのストーリーのなかから、55年経過した今だからこそ考えさせられる3つの話を紹介する。

【写真】55年経ったいまも色褪せない、ウルトラセブン

 第8話「狙われた街」で問われたのは、人間同士の信頼関係だ。地球侵略を企むメトロン星人は、タバコに赤い結晶体を仕込んで流通させる。赤い結晶体を含んだタバコを吸うと、理性や感情を失い、敵を倒す殺意だけを持った人間になってしまう。主人公であるモロボシ・ダンとアパートの一室で向かい合ったメトロン星人は、暴力による地球支配ではなく、地球人同士が信頼関係をなくせば地球人は自滅するだろうと伝える。

 最終的にメトロン星人はウルトラセブンに倒されるが、この話はそれだけでは終わらない。ラストに流れるナレーションは、現代にも通じる示唆に富んだ内容だ。メトロン星人による『地球人同士の信頼関係を利用した侵略手法』に驚きながらも「我々人類は今、宇宙人に狙われるほどお互いを信頼してはいませんから」と締めくくる。当時から55年経った令和の時代、果たして私たちはお互いを信頼し合うようになったのだろうか。ネットでは、この話に言及した2023年5月28日付読売新聞の編集手帳を引用して「人生を変えてください」と呼びかける方もいる。

 人類への警鐘という意味では、第26話「超兵器R1号」を忘れてはいけない。地球防衛軍によって惑星攻撃用の超兵器R1号が開発される。実際の威力を確認するため、生物のいない星と判断された「ギエロン星」にて実験がおこなわれたが、その結果、ギエロン星は粉々に砕け散ってしまう。しかし、生物がいないと考えられていたギエロン星には、実際は生物が存在し、R1号の爆発のショックによって変異してしまう。

 ギエロン星から地球に降り立った生物は「ギエロン星獣」と名付けられ、地球防衛軍の攻撃にさらされる。新型爆弾で一度は爆死させたものの、バラバラになった肉片がひとつに集まり再生する。ギエロン星獣を倒すためにR1号よりも強力なR2号の開発が検討される。敵が強力になれば、それ以上の兵器を造ればいいという発想だ。

 ギエロン星獣は最終的にウルトラセブンに倒され、R2号の開発・製造は中止される方向に。自衛のためとはいえ、星をひとつ破壊し、そこに住む生物を殺害する人類の姿勢に深く考えさせられる。55年経っても戦争が無くならない今を鑑み「切ない物語」と呟く方もいる。

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