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UPDATE|2023/08/09

インパルス板倉が初エッセイを出版「ためになる本ではなく、人を笑わせる本を書きたかった」

インパルス板倉俊之 撮影/松山勇樹

お笑いコンビ・インパルスの板倉俊之が、エッセイ『屋上とライフル』(2023年8月1日発売/飛鳥新社)を出版した。小学生時代に経験した家族や友人との何気ないやり取りから、現在打ち込んでいる趣味まで、扱うトピックは多岐にわたりながら、そのそれぞれがユーモアあふれる独自の視点から綴られることにより幅広い読者層の心を捉える一冊になっている。自身初エッセイとなる本作を通じて板倉が試みた表現、執筆を通じて感じたこととは?(前後編の前編)

【写真】初のエッセイ本を出版したインパルスの板倉俊之

これまで5冊の小説作品を発表してきた板倉俊之。エッセイや自伝を中心とした芸人本ブームのなか、2009年に初著書『トリガー』を執筆した経緯について、このように振り返る。

「出版社から『本を出しませんか』というオファーがあったんですけど、あの時期はとにかくパンチ力がありすぎる人生を送ってきた人が一斉に本を出していたじゃないですか(笑)。中学のとき段ボールを食ってたっという人の自伝の後に、俺の人生について書いてどうなるんだよって思っちゃったんですよ。

なので、『エッセイや自伝を書く代わりに、普段生活していてイラっとくるような人たちを片っ端から銃で撃ちまくっていく、みたいな話が頭の中にあったので、それをフィクションで書いてみよう』と考えたんです。そこで話を膨らませていったら、『あ、これ面白くなりそうだな』と感じられてきた……というのが、小説を書くようになったきっかけですね」

そんな彼が小説家デビューから14年を数える今年、初エッセイを発表しようと思い立った理由は、自らの中に芽生えた“好奇心”だったという。

「小説を書く上で、笑いをメインテーマにしたことはなかったんです。僕は普段、芸人としてお笑いのことを考えながら生きているなかで、お笑いにはできないけどストーリーとして面白そうだっていうものを、小説でやってきていて。興奮させたり、泣かせたり、 驚かせたりするための装置として小説を書く、という価値観ですね。

でも、芸人をやりながら小説もコンスタントに書いているうちに『自分は文章で笑いを生み出せるんだろうか』と思い始めてきた。芸人として、エピソードトークを話しっぱなしで終わっちゃってるのも、なんだかもったいないなという気持ちもありました。完全に自分のためだけの空間でじっくりと笑える話をしたらどうなるだろう、ということに興味が出てきたんです。そうやって、初めて“笑わせるための文章”を書こうと思ったら、結果的にエッセイになったという感じですね」

板倉にとって新たな試みとなった『屋上とライフル』には、彼が送る日常の些細な出来事が縦横無尽に綴られている。多岐にわたるトピックが取り上げられる本作を執筆する上で、彼にとっての軸になったのも、やはり“笑い”だった。

「自分が書きたい話を書いたというよりは、オチがあってかつ、ちゃんと文章で読者を笑わせられるかどうかでそれぞれのテーマを決めました。自分のこれまでを振り返ってみて、『そういえば、あれ面白かったなあ』って思うエピソードを選んだだけなんですけどね。

本当になんでもない日常が中心になっているのも、『人のためになる本』というより、『人を笑わせる本』を書きたい、という思いが原動力になっているからだと思います」

AUTHOR

菅原 史稀


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