小学生時代の夏休みの宿題にまつわるエピソードで始まる本作には、子供の頃に経験した出来事やそれを通じて抱いた感情などが多く著されていることも特徴的だ。
「書いてみてわかったんですが、子供のときってすごいアホなことやってるし、物事を新鮮に捉える年頃ということもあって、そこに面白いエピソードが集中しているんですよね。
当時感じたことを言語化できていたかというと違うと思いますけど、小説を何度も書いてきたことで、だんだんとそのやり方も見えてきましたし。あと、家族や友人と集まると『あの頃、お前こんなこと言ってたよな』って、何回も同じ話をされるじゃないですか(笑)。そうやって反復しながら、新たに感じたこともありましたね」
身の回りのあらゆることを一つひとつ拾い上げ、様々な角度から見つめて本質を追求する板倉の観察眼は、芸人/コント師としてはもちろんのこと、小説家、そしてエッセイストとしても発揮される。
「生きているなかで何か引っかかったことがあれば、それを人が笑うレベルにまで膨らませられるか考える、というのは日常的にやっています。それはただの事実ではなく感想というか、ある意味“日常についての論文”みたいなものなのかもしれないですね」
インタビューの最後には、初エッセイを出版後に改めて抱いたという、文章を通じた表現ならではの新鮮な感情について語ってくれた。
「お客さんの前でやるお笑いと違って、本は受け手が笑ってる瞬間を実際に目撃できないのが、もどかしい気持ちになりますね。小説を書いていてもそうなんですけど……作者としてはだいぶ苦労して書いているから、一番見どころになっているどんでん返しのところを読んでる最中の人の顔が見たくて仕方がないんですよ(笑)。『ちゃんとウケてるのかな? どうなのかな』っていうのは、すごく気になっちゃいます」
【後編はこちら】インパルス板倉“趣味人”としての顔「ハイエース旅は冒険の記録を動画で残している感覚」