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UPDATE|2023/12/09

北野武監督『首』をより面白く観るには?有村昆が解説「世界遺産級のイイ顔の俳優陣、狂気の描き方がガチ」

北野武監督最新映画『首』

構想30年、北野武監督の最新映画『首』がついに公開。8年ぶりの新作であり、2003 年公開の『座頭市』依頼の時代劇である本作を、映画コメンテーターの有村昆が見どころを独自に解説。また「『首』はまさにキタノ映画の集大成」だと語るアリコンがおすすめする、『首』を鑑賞する前に観るべき北野武作品とは?

【写真】⻄島秀俊、加瀬亮、中村獅童…名優たちが集結、北野武最新作『首』場面写真【12点】

キタノ映画をあまり観てないという方には、関連作としてはまず『アウトレイジ』をおすすめします。それと時代劇でアクションも凄い『座頭市』、そして『ソナチネ』。たけしさん独特の死生観と、あっけない終わりというのをすごく体感できると思うので、この3本は抑えておいていただきたいです。

さて、監督・脚本・原作が北野武、主演はビートたけしとクレジットされている『首』。たけしさんらしい部分が随所に散りばめられていて、過激で物騒なんですけど、堂々としたエンターテインメント作品になっています。

冒頭は、戦国時代の『アウトレイジ』です。織田信長に仕える武将たちが、生き残るために裏切りを繰り返し、誰と手を組むのかという心理戦を繰り広げる。そこに当時の「衆道」や「男色」といったBL要素が絡んでくるのが興味深い。

遠藤憲一さんが演じている荒木村重という、最初に信長に謀反を起こした武将と、明智光秀が相思相愛の関係なんですね。そして実は信長も光秀のことが好きという、私情と色恋沙汰と三角関係が渦巻いて、戦にまで発展していく。

物語は織田信長が暗殺される「本能寺の変」に集約されていきますが、この真相というのは80を超えるほど様々な説があると言われていて、今回、たけしさんが採用したのが、秀吉が光秀に謀反を焚き付けて、天下取りをさせるんだけど、あとから秀吉が裏切って光秀を討つという流れです。

その背景として、信長があまりにもクレイジーで、誰もついていけない魔王として描かれている。それでも配下の武将たちは自身の出世のために耐えていたんだけど、結局は信長は自分の子供に家督を譲りたいと思っていることが発覚して、我慢していた武将たちが欲を丸出しで動き出していく。

本作のキャッチコピーは「狂ってやがる」ですが、その狂気の描き方がガチなんですよ。ちょっと振り切れてる感じの、ヤクザとも違う怖さ。でも戦国という時代ではそれがリアルに見えてくるんですよね。


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