『ある日どこかで』(1980年)、『ニューヨークの恋人』(2001年)、『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』(2013年)。日本でも、『時をかける少女』(1983年)、『君の名は。』(2016年)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016年)といった作品が挙げられるだろう。
だがこの『同感 時が交差する初恋』は、自分の肉体が別の時代へ移動するのではなく、1999年の時代に生きるヨンと2022年の時代に生きるムニが、無線機を通してコミュニケーションをはかっていく。過去に起きたことによって未来が変化するタイムパラドックスを考えると、常に判断を求められるのは過去にいるヨンで、ムニはあくまで傍観者でしかない。
ココが非常にミソで、その設定ゆえに作品は意外にも非常にビターな青春映画として機能している。未来を知っているからこそ、自分は何を為すべきなのか。前半が明るいラブコメ的トーンだったのに対し、後半になるにつれてその葛藤が重くのしかかってくる。タイムスリップというSF要素を入れつつも、青春の蹉跌を真正面からしっかりと描いた作品なのだ。
皆既月食、降りしきる雨、ノソノソと歩く亀。監督と脚本を務めたソ・ウニョンは、理工学科を卒業して半導体研究員として働いていたという経歴を持つバリバリの理系だが、巧みなストーリーテリングもさることながら、何よりもファンタジックな物語を補強するビジュアル・センスが際立っている。アオハル・デイズのビタースウィート感、そこかしこにインサートされたSFファンタジー感。『同感 時が交差する初恋』は、観る者の感情を大きく揺り動かす作品に仕上がっている。
〇作品情報
監督:ソ・ウニョンほか
出演:ヨ・ジング、チョ・イヒョン、キム・ヘユン、ナ・イヌ、ペ・イニョク
2022年/韓国/韓国語/114分/ビスタサイズ/5.1ch
字幕:根本理恵
原題:동감 英題:Ditto
配給:KADOKAWA
公式サイト:https://doukan-movie.jp
【あわせて読む】話題の韓国映画『ドリーム~狙え、人生逆転ゴール!~』がヒットした3つの要素