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UPDATE|2024/05/16

【何観る週末シネマ】ラブコメ劇場公開率が低い日本、配給会社の勇気に感動『恋するプリテンダー』

『恋するプリテンダー』

この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『恋するプリテンダー』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】『恋するプリテンダー』場面写真【11点】

〇ストーリー
弁護士を目指してロースクールに通うビー(シドニー・スウィーニー)は、街角のカフェで出会った金融マンのベン(グレン・パウエル)と最高の初デートをするが、ちょっとした行き違いによって燃え上がったはずの恋心が一気に凍りついてしまう。数年後、そんな2人はオーストラリアで同じ結婚式に出席することになり最悪にも再会!真夏のリゾートウェディングに皆が心躍らせる中、周囲も気を遣うほどの険悪ムードな2人だったが、復縁を迫る元カレから逃げたいビーと元カノの気を引いてヨリを戻したいベンは、お互いの望みを叶えるために恋人のフリをするというまさかのフェイク・カップル契約を結ぶ。果たしてウソつきな2人は、最高のカップルを演じきることができるのか…⁉ オトナ男女の意地とプライドを懸けた”××きゅん”(読み:チョメきゅん)ラブゲームの火蓋が切って落とされる!

〇おすすめポイント
エマ・ストーン主演作『小悪魔はなぜモテる?!』(2010)の監督として知られるようになったウィル・グラック最新作。

近年は「ピーター・ラビット」シリーズなどを制作しており、『ステイ・フレンズ』(2011)以降は、ラブコメからは少し離れていたが、10年以上ぶりに撮った作品は、時代錯誤ともいえる、かなりストレートな恋愛劇であった。

今作の下敷きとなっているのは、ウィリアム・シェイクスピアの「空騒ぎ」であり、主体が王道ラブストーリーということもあって、よりそう感じさせるのかもしれない。

ただし、今作を紹介するうえで一番先に言いたいのは、日本のソニー・ピクチャーズが劇場公開に踏み切ったことを何より評価したいということだ。

もともと日本におけるアメリカン・コメディの劇場公開率というのはかなり低く、とくにティーンムービーやラブコメは、配信スルーになることがもはや当たり前となっており、Netflixはラブコメの墓場状態。

全米ボックスオフィスの上位にランキング入りした再映画化版『ミーン・ガールズ』であっても配信スルーになったぐらいだ。

しかもこれほどまでにストレートな恋愛劇をラブコメ・アウェーな日本で劇場公開しようというのだから、その勇気は見事としか言いようがないだろう。

将来に対する不安や葛藤がある~というフワっとした悩みを抱える主人公は、良い意味で造形が軽い。しかし、世界的に酷評された『マダムウェブ』(2024)のなかでも演技だけは大きく評価されたシドニー・スウィーニーが主人公を演じているだけのことはあって、それなりのキャラクターに見える。

つまりキャスティングの重要性を改めて感じるはずだ。

同性愛の結婚に寛容的な両親という点は、時代の流れを感じるものの、基本的に恵まれた環境で育った富裕層家庭のパーティーやバカンスシーンを観ることになる。

富裕層というと、どうしても貧富の差を象徴的に皮肉的に色眼鏡で見てしまうが、皮肉を見せていながら、それを皮肉なく見ることができるのだとしたら、それこそ平和な世の中といえるのかもしれない。

また今作で最も印象的だったのは、ナターシャ・ベディングフィールドのヒット曲「Unwritten」の存在感だ。

「Unwritten」といえば、『旅するジーンズと16歳の夏』(2005)でも効果的に使用されていたが、それ以上に効果的に使用されている。なんなら「Unwritten」が作品を支えていると言っても過言ではない。

〇作品情報
原題:ANYONE BUT YOU
監督:ウィル・グラック
脚本:ウィル・グラック、イラナ・ウォルパート
出演:シドニー・スウィーニー、グレン・パウエル、アレクサンドラ・シップ、レイチェル・グリフィスほか
公式サイト:https://www.koipuri-movie.jp
5月10日(金)より全国の映画館で公開

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