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UPDATE|2024/03/29

貧国と介護、逃げ出せない社会問題を詰め合わせた鬱映画『ビニールハウス』

映画『ビニールハウス』

貧困や孤独、介護など現代の韓国が抱える社会問題に根ざした物語が展開するサスペンス映画『ビニールハウス』が現在公開されている。

【写真】キム・ソヒョンのポートレート

貧困や介護問題は、文化や環境、行政の対応等の違いはあったとしても、全世界共通の社会問題だといえるだろう。

映画というものは、現実逃避の一部ではあるものの、ただでさえ過酷な現実の延長線上を観るというのは、少し離れた環境ならば極限の状態を疑似体験するという意味では良いのかもしれないし、自分は幸せだと改めて感じるのも良い。

しかし、同じように日々の介護やギリギリの生活に疲れている状態で今作を観ると、とことん、どん底に落とされるだろうから、覚悟して観てもらいたい。

こういった題材を扱った作品の着地点としては、劣悪な環境ではあるものの、かすかな希望や、ちょっとした光を家族や友人の優しさから無理やりにでも見つけ出すしかないわけだが、現実問題として考えれば、そんなにポジティブに変換できるような問題ではない。

実際に監督のイ・ソルヒの母と認知症になった祖母の関係が物語の基盤としてあるようだ。だからこそリアルで容赦がないのだろう。

逃げ出したくても逃げ出せない、精神崩壊とストレスが犯罪を引き寄せてしまう負のループから、何に希望を見出せばよいのだろうか。

何が間違っていたのか、どこで道を間違えたのか……。過ぎ去った日々を思い出しても仕方ないのだが、過去の選択と自分の不甲斐なさを攻めるしかない。

人の幸せはお金の問題ではなく、何が幸せであるかの考え方の問題であるかもしれない。ところがそういった精神論だけではどうにもならない局面においては、結局のところは、ある程度のお金がものをいう場合もある。

お金さえあれば精神的にも救われたかもしれない、もう少し環境が良ければ救われたかもしれない……。そう思ってしまう自分は、ダメな人間なのだろうか……。


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