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UPDATE|2024/08/12

有村昆が歴代オリンピック映画を紹介、今こそ観るべきナチス政権下ベルリンオリンピック映画

『栄光のランナー/1936ベルリン』

第33回オリンピック競技大会が7月26日から8月11日までフランス・パリで開催された。32競技329種目が実施され、世界中を熱狂の渦に巻き込んだ本大会の熱をそのままに、有村昆が今見るべきオリンピック映画をリコメンド。

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パリ・オリンピック、盛り上がりましたね! 開催前は選手や競技に関する情報が少なくて、さらにパリの街の不穏な状況などばかりが伝えられていたのでどうなることかと思いましたけど、いざ始まってみると熱い試合と感動ドラマが続いて、非常に印象的な大会になったと思います。

この期間、オリンピック中継ばかり観ていて映画をあまり観なかったという方も多いと思いますが、今回はその余韻に浸れて、さらにちょっと考えさせられるようなオリンピック関連映画をご紹介したいと思います。

まずは、今となってはいろいろな意味で“黒歴史”として語られることの多い前回の東京オリンピックに密着した『東京2020オリンピック』というドキュメント映画です。

これはタイトル通り、2021年に開催された東京オリンピックの「公式記録映画」なんですが、公開までの経緯や評判があまり良くなかったこともあり、ちゃんと本編を観たという人は意外と少ないんじゃないでしょうか。

この作品は「SIDE:A」と「SIDE:B」の2部作になっていて、「SIDE:A」はアスリート側に迫った、これぞオリンピック記録映画という内容になっています。

ただ、東京オリンピックはコロナの影響で1年延期され、さらにほとんどの競技が無観客で行われるというイレギュラーな大会となったので、選手たちはその事態にどう向き合い、メンタルを保っていたのかなどについても踏み込んでいます。

でも、僕が面白いなと思ったのは「SIDE:B」のほうなんです。こちらは非アスリート側の目線、つまりオリンピックの運営委員会とか、関連する自治体、政界・財界といった組織側を追ったドキュメント映画なんです。

東京オリンピックは、呪われているのではと思いたくなるくらい開催前から最後までトラブル続きでした。誘致の際にIOC委員に金品を贈っていたことが発覚したり、森喜朗会長の女性蔑視発言による辞任劇からの橋本聖子さんの就任などのスキャンダル。さらにエンブレムの盗用や、開会式・閉会式に招聘されたメンバーの過去の発言など、次々と起こる問題に運営スタッフたちが右往左往するところなど、すべて映像に収められている。

それに加えて「SIDE:A」でも取り上げたコロナによる延期、無観客による開催の決定、マラソン開催場所の移転なども、運営側からの視点で映し出されています。

資料によると、750日間も密着して、5000時間もカメラを回し続けたそうで、その膨大な映像をそれぞれ2時間程度にまとめてあるんですから、それはもう中身が濃い。

この「SIDE:A」と「SIDE:B」を別の言い方をすると、「個人」と「組織」なんですよ。個人が組織によって振り回されてしまう姿が捉えられているし、その組織も、もっと大きな「世間」というものに振り回されてしまう。

クリント・イーストウッド監督がアメリカ側から見た『父親たちの星条旗』と日本側からの『硫黄島からの手紙』という2部作で太平洋戦争を多重的に描きましたが、この『東京2020オリンピック』も、あの国家的イベントはなんだったのかということを個人と組織の2つで1つにして浮かび上がらせようという意図なんですね。


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