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UPDATE|2014/06/10

アイドリング!!!の6・7 後藤郁卒業ライブに見たアイドルの美しさ

 前の夜から激しい雨が続いていた2014年6月7日、後藤郁卒業ライブ『25号かおるんの新しい旅立ち たくさんの想い出ごっちゃんですング!!!』がZepp DiverCity TOKYOで開催された。5月10日の唐突な卒業発表から約1ヶ月、無抵抗にこの日を迎えることしかできなかったファンにとって(筆者にとっても)、すべての光景と音、そして感情の発露を取りこぼしてはいけない最後の時間だった。

 

 
 月刊エンタメ誌での連載『アイドリング!!! 今月の反省会ング!!!』(現在は『アイドリング!!!EXPO』として継続)で2012年4月から番組の収録現場にお邪魔をするようになっていたのだが、後藤さんの卒業を知ったのは発表前日の5月9日、観覧客を帰した後に行われたその日最後の収録の直前だった。メンバーにはドッキリの形で、突然VTRによる発表が行われるのだ。ひな段に待機しているメンバーたちは、カメラが回る直前まで近くに座るメンバー同士で賑やかに談笑しているのが通例。そんな中、きっと以前から後藤さんの卒業を、そしてここで、それが発表されることを知っていたのだろう伊藤祐奈さんが、時折、物憂げな表情をしていたり、後藤さんの目にうっすらたまってしまった涙を、さりげなく拭っているような様子を見たら、うっかり熱いものがこみ上げてきそうになった。

 ともあれ、こうしてメンバーに伝えられた卒業だった。

「アイドルとして現在進行形で成長するアイドリングな女の子たちの番組」。と、いまさら番組の前口上を持ち出すことに深い意味はないのだが、25号・後藤郁もまさに、この番組コンセプトを体現した存在だったと思う。

 2010年4月に4期生として14歳で加入して以降、後藤さんはすごく大ざっぱに言えば「顔が美形なのに靴がクサい」くらいのキャラ立ちしかしていなかった。卒業を発表した放送回『ありのままング!!!』でも、MCのバカリズム升野に「喋った量をギュっとしたら5分くらいだよね」と言われている。しかし思い返せば、2012年に〝しゃべるとヘンな空気になる〟ことをイジると面白いことが発見され『みなすべり』という企画に昇華されると、一気に存在感を示し始めた(とはいえ、スベリキャラという意味でだが)。

 その一方で、ダンスに関しては「ずっと苦手」なままで、特に20人を超える大所帯のアイドリング!!!においてライブで目立つということは、それほどなかったかも知れない。だがこれも、2013年8月に加入したNEO期生プラス同期の盟友・伊藤祐奈と共に参加した7人組の『アイドリングNEO』で俄然、輝きを増す。入ったばかりのNEO期生に対しては頼れる先輩として、NEOのリーダー的存在である伊藤祐奈には、あらゆる面でサポートする役割もになっていた。

「いずれアイドリング!!!を背負って立つ」。長らくポンコツキャラだった後藤郁ではあったが、反面、何かと周囲にこう評されていた。2011年の1月に放送された番組での運勢占いでメンバー内の1位を獲得し、占い師から前述のコメントを送られた(そして間もなく休業に入るというオチがついたが)ことがきっかけではなかったかと認識しているが、ここのところの活躍ぶりは、その言葉がまさに現実のものとして可視化してきているようだった。

 4期生加入後初のシングル『目には青葉 山ホトトギス 初恋』で幕を明けた6・7のライブは、後藤さんがセットリストを組み立てたという。序盤に、アイドリングNEOのデビューシングル『mero mero』からセカンドシングル『Sakuraホライズン』まで、約30分にわたりNEOの持ち歌7曲がフル尺ですべて披露された。これには、「卒業ライブとはいえ、他のメンバーのファンもいるのだから長すぎる」という声があるかも知れない。実際にハーフにしてテンポよく見せることができたかも知れない。しかし、確かに言えることは、この日のNEOのパフォーマンスは間違いなく過去最高のものであったし、涙をこらえて歌い踊るメンバーたちの姿に、アイドルが結成した瞬間に背負わなければならない、いずれは〝破滅に向かってゆく〟という業の深い”美しさ”が宿っていたことだけは言っておきたい。この経験を経たNEOが今後、どのような成長を見せるのかは期待大だ。

 もうひとつ、特筆すべきは『Forever Remember』。伊藤祐奈と後藤郁の2人で披露したこの曲は、通常なら「男女のすれ違いによる別れの歌」だが、歌詞を聴くほどに、このときばかりは2人の物語が重なった。この曲をセトリに入れたのは見事と言うほかない。

『アイドリング!!!収録中!!!』という書籍の中で、メンバー全員に直筆で「あなたにとってアイドリング!!!とは?」という問いに答えてもらったページを思い返した。そこで後藤さんは「遠足に行くバスの中」と、味のあるイラストまで添えて書いてくれた。でもこの日、そのバスから後藤さんは降りて自分の足で進んで行くことを選んだ。まだ雨は降り続いていたが、その歩みには、ならし運転を終えた心強さがあった。



※深夜に一気に書き上げたものだったので、タイトルをちょっと変えつつ少し加筆しました(石)
 
石渡 稔 『月刊エンタメ』編集部員。主にアイドリング!!!と野球記事などを担当している。ムック『アイドリング!!!収録中!!!』編集&執筆を担当。  

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