ランドセルを背負ってHKT48に加入した女の子が、9年経って、HKT48の主役となり、大きなステージで卒業を発表する。アイドルの物語としては理想的ともいえるし、なによりも印象に残ったのは泣きながらファンに挨拶する矢吹奈子を見守る田中美久の表情だった。一緒に大泣きするのでは? と思っていたのだが、慈母のようなやさしい表情で静かに遠くから見つめていた。これもまた9年の月日を感じさせるシーンではないか。
HKT48が前回、幕張メッセでコンサートをおこなったのは8年前のこと。まだ加入したばかりの矢吹奈子はそのステージで同期たちと『覚えてください』を歌った。時代はめぐり、この日の昼の部では6期生たちが『覚えてください』を元気いっぱいにパフォーマンスした。この運命の交錯がのちに大きなドラマとして語り継がれるようになるかどうかは、これからの6期生の活躍ぶりにかかっている。
矢吹奈子は来年の春をメドに卒業する。
その前にはHKT48のメンバーとして最後のシングルがリリースされ、卒業コンサートも予定されているという。卒業後は本格的に女優として活動していくとのことなので、HKT48からの卒業=アイドルからも卒業、ということになる。あと半年間、アイドルとしてのラストランに注視していきたい。
1期生、2期生の卒業と6期生の躍進がクロスしたことで「過渡期」に突入したかのように思われたHKT48は、矢吹奈子の卒業発表で激動の半年間に放りこまれることとなった。11月には福岡で2本のコンサートが開催されるが、さらに来春には矢吹奈子の卒業コンサートという大舞台が追加されることとなった。この半年間でHKT48はどう変わり、誰が飛び出してくるのか? 未来へのメッセージはまだ誰にも解読できないし、半年間でもいくらでも明るい光に変えていくことができるのだ。まずは11月26日、福岡市民会館でのコンサートに注目したい。