2022年12月30日に全国公開された映画『Mr.Children「GIFT for you」』。本作では、30周年ツアーのライブ映像、ファンのエピソード、メンバーを傍で見てきた関係者の声をもとに、“Mr.Childrenと彼らを愛する人達との絆”が描かれている。メンバーと長い期間、仕事をともにしてきた稲垣哲朗氏がメガホンを取ったものだ。
【写真】ファンとの絆の物語、映画『Mr.Children「GIFT for you」』予告編“Mr.Childrenの30年と、彼らを愛する人たちの奇跡の物語”と銘打っているこの映画。奇跡の物語について、映画を観て感じ取ったことを綴っていきたい。
2022年にデビュー30周年の節目を迎えたミスチル。同年には全国ドーム&スタジアムツアー『Mr.Children 30th Anniversary Tour 半世紀へのエントランス』が開催され、コロナ禍以降では国内最大規模となる約60万人を動員した。
マスクの着用必須、声を出せない状況下で行われたこのツアーは、ミスチルと彼らを愛する人達の“奇跡の物語”の集結を感じるものだった。本作の制作を決意したのは、ツアー終演後から3ヵ月経った2022年9月、最終公演にあたるヤンマースタジアム長居でのライブ映像を見返している時だったと、稲垣氏が話している。
映画では、ライブ映像の間に「ミスチルの音楽に励まされた」「ミスチルの音楽のおかげで前を向けた」そんなエピソードをファンが惜しみなく語っている。個人的なエピソードが多く盛り込まれたことには賛否両論が生じたが、私は“奇跡の物語”の一つとして腑に落ちる見方ができた。30年間変わらず音楽と向き合うメンバー、ミスチルを愛する人達、それぞれに“奇跡の物語”があるのだと、この映画を通して改めて感じられたのである。
「あなたの人生の中で、Mr.Childrenはどんな音を鳴らしていますか?」
映画の予告編でも流れるこの一言。思い返してみれば、熱狂的なファンとは言い難い私の人生の中でも、彼らはたくさんの音を鳴らしてくれていた。私がミスチルを知ったのは小学2年生の時。そこから人生のさまざまな出来事と共に、ミスチルの存在があった。
「ミスチルの音楽を聴いて辛い時期を乗り越えられた」「人生にミスチルが寄り添ってくれている」映画の中で繰り返されるファンのエピソードに、彼らの音楽を身近に感じてきた私は何の不自然もなく共感できた。ただ、音楽に救われた・音楽が寄り添ってくれた経験は、他アーティストのファンでもよくあることだろう。わざわざ映画の尺をとるべきことなのか、そう感じてしまう気持ちも否定することはできない。
しかし、ミスチルが活躍し続けてくれるおかげでミスチルの音楽と出逢え、この時代に彼らを愛する人達が一つの場所に集結することは、よくあることとは言えないのではないか。