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UPDATE|2023/02/21

アプガ(プロレス)渡辺未詩の原点を元週刊プロレス記者が深堀り「アイドルを目指していたはずが」

(C)東京女子プロレス



プロレスラーとしてデビューするには、とにもかくにも地道な練習が必要。しっかりと受け身が取れるようにならないと、リングに上がれない。大技を食らったらケガをしてしまうことは必至なので、絶対に習得しなくてはいけない技術なのである。

もちろんデビュー戦でチャンピオンに、というサクセスストーリーも過去にはあるが、デビュー戦に至るまでは誰もが下積みを経験している。プロレスファンであれば、それはもう常識なのだが、まったくプロレスを知らずにこの世界に飛びこんでしまった渡辺未詩にとっては「?」の連続だった。

「もともとアイドルヲタクだったので、アイドルのレッスンの重要さはわかっていたんですよ。すっぴんでジャージ姿でやっていても、このレッスンがステージに直結することを知っているから、汗すらもキラキラして見えるんですね。でも、プロレスの練習は……ちょっとホコリっぽいマットにひたすら背中を打ちつけることが、いったいなににつながってくるのかわからない。それに相手の技を受けたときにケガをしないために受け身は大事だって教えてもらったのに、そのあとドロップキックの練習をしたら、私が技をかけているのに、最終的は着地するときに受け身を取らなくちゃいけないじゃないですか? えっ、私、攻めているの? やられてるの? って頭の中がパニック状態で、もうなにをやっているのかわからなくなりました(苦笑)」

そのまま攻守逆転し、練習相手のドロップキックを食らったら、受け身がどうのこうのの前に、その威力と痛みで頭の中が真っ白になった。

プロレスとは、かくも難しい。

アイドルであれば、ものすごくかわいかったら、すぐに注目の存在になれるし、ちょっとしたきっかけがあれば一夜にして国民的ヒロインになれる可能性だってある。それと比べうと、プロレスはスターになるまで時間がかかるし、道場での練習はあまりにも地味で痛すぎる。実際、最初の何カ月かはプロレスを辞めよう、と渡辺未詩は考えた、という。

「辛いからとか痛いからっていうわけでもないんですよ。だんだんプロレスが好きになっていくのはわかったので。ただ、このままトレーニングを続けて、がっつり筋肉がついてしまったら、もうフツーのアイドルには戻れないかなって(笑)。辞めるなら、その前だなって思っていたんですけど、デビューして試合をするようになったら、そういう気持ちは薄れていって、1年が経つころには辞めたいって気持ちは完全になくなりました」

そこにはまったくプロレスに対する知識がない、というプロレスラーとしては不利な要素になりかねないバックボーンがプラスに働いていたのである。

【2回目はこちら】アプガ(プロレス)渡辺未詩がリングで感涙、コロナ禍で再認識した観客の歓声の力
AUTHOR

小島 和宏


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