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UPDATE|2023/03/11

阿部サダヲ主演『シャイロックの子供たち』、池井戸潤作品が働く全ての人たちに宿らせる感情

(C) 2023映画「シャイロックの子供たち」製作委員会


そして2022年公開の『アキラとあきら』。この作品の舞台は、『シャイロックの子供たち』と同じく銀行だ。日本有数のメガバンクに同期入社した山崎と階堂は、真逆の信念をもつライバルとして火花を散らす。しかし、山崎はある案件によって左遷され、階堂は目を背け続けていた親族同士の争いに巻き込まれてしまう。絶望的な状況を前にした、2人の奇跡の逆転劇を描いた作品だ。メインキャストは、竹内涼真と横浜流星が務めている。

ドラマ『半沢直樹』シリーズを含め、これらの“映像化”された池井戸作品に見られるのは、描かれる業界にかかわらず、観た人の共感を生むストーリーと人物像の描き方の見事さだ。業界特有の流れや暗黙の了解は少なからずあるものの、根本には人間の裏の顔や家族愛、立ち向かう信念など、働く人間であれば誰しも共感できる心情がちりばめられている。ラストはスカッとする作品、モヤッとする作品どちらもあるため、鑑賞後に残る思いはそれぞれだろう。

小説では細かく描かれる業界の描写が、映画では分かりやすくカットされていたり注釈が入っていたりする。さらに、小説では想像することしかできない登場人物の表情を見られる。だからこそ、映像化された池井戸作品は、業界に抵抗を感じることもなく、描かれる人物像もより鮮明になるのだ。作品で描かれる世界にどっぷりと浸れ、鑑賞後、働くすべての人たちに何かしらの気持ちを宿らせてくれるのが、池井戸作品であるといえるだろう。

働く者の信念や愛に加え、下心や闇の部分など、前向きな感情だけではなく、誰もが一度はもったことがあるだろう“良からぬ感情”にも共感を呼ぶ池井戸作品。主人公や周りの人物に、視聴者・読者は自然と希望や思いを重ねながら観てしまう。

池井戸潤と阿部サダヲが異才のタッグで贈る『シャイロックの子供たち』。鑑賞後、あなたにはどんな感情が宿るのだろうか。

【あわせて読む】池井戸潤×阿部サダヲがタッグ・映画『シャイロックの子供たち』メガバンクの不祥事が泥沼化

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