宝島社の「人気チェーン公式ファンブック」シリーズが人気だ。企業の魅力を詰め込んだ充実の内容と、そのチェーン店で割引などのサービスが受けられるお得なパスポートがファンの心を掴み、ヒットを記録している。「CoCo壱」「吉野家」「幸楽苑」といった飲食チェーンをメインに、「星野リゾート」「アパホテル」「ビッグエコー」など、リゾートやレジャー分野のファンブックも展開中だ。「チェーン店の公式ファンブック」という今までになかった企画は、どのようにして生まれたのか。宝島社のムック局・局長の山崎准氏に話を聞いた。
【写真】充実のパスポートも魅力、人気チェーン公式ファンブック数々のムック本を手がけている宝島社。なかでも「人気チェーン公式ファンブック」は、累計80万部超えの人気シリーズだ。同シリーズが誕生したのは、企画会議でのあるひと言がきっかけだったという。
「元々我々は、アニメ、漫画、スポーツなど、多くのファンがついているジャンルをとことん深掘りするムック本を多数作っていました。さまざまなジャンルのムック本を作っていくなかで、『今、エンタメ系で熱いファンがついているものってなんだろう？』と、考えていたのです。ちょうどその時に開かれた企画会議で、『●●というチェーンの飲食店が大好きでよく行くんですが、そこって今エンタメ化してません？』と発言した社員がいて。確かに、人気アニメとコラボしたメニューを出している店とか、子どもが遊べるガチャガチャが用意してある店とか、タッチパネルで注文した商品が電車で運ばれてくる店とか、エンタメ化している飲食チェーンって多いな、と思ったんです」
企画会議で提案した社員のように、お気に入りのチェーン店があるという人は少なくない。そんな“ファン”たる人々が魅了されているのは、料理はもちろん、その店独自のエンタメ要素だ。ファンを虜にする、各チェーン店の工夫とは。そこを深掘りしようと始まったのが、「人気チェーン公式ファンブック」シリーズなのだ。
「コンセプトは『外の人が見ても面白い社内報』です。社内の人たちが当たり前だと思っていることほどファンは知りたいだろうと思い、開発者が語る人気メニューの開発秘話や商品の工場見学的な内容を盛り込みました。とはいえ『チェーン店のファンブック』なんて今までに例がありませんから、どの企業に依頼をしても『よく分からないので……』とお断りされてばかりでした。それでも『チェーン店の裏側を知りたいファンは大勢いるはず』と信じ、めげずに説得を続けました。結果、今では企業側から逆オファーをいただくほどに認知度を獲得しました」
取り上げた企業からも、さまざまな反応が寄せられているという。
「かなりディープな部分まで取材しているので、重役の方でも知らないような情報もあり、新鮮に驚かれていたのは面白かったですね。一番印象的だったのは『従業員が楽しそうに読んでいて、嬉しかった』というお声です。社員の皆さんにも喜んでいただけて、しかもモチベーションがアップしたというお話は、我々としても大変嬉しく思います。社員の皆さんもそのチェーンの“ファン”ですから、楽しんでいただけたのではないでしょうか」
