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UPDATE|2023/04/13

府川唯未&田中稔の娘・田中きずなが紡ぐ、プロレスならではの30年越しの運命の連鎖

写真提供 プロレスリングWAVE

プロレスラー田中稔と元プロレスラー府川唯未の娘の田中きずなが、4月2日に新宿FACEで行われたwave新宿大会にて、プロレスリングWAVEよりデビューを飾った。30年前、府川唯未のデビュー戦を取材した元週刊プロレスの小島和宏記者が、愛娘のデビュー戦を見届ける(前後編の後編)。

【前編はこちら】田中稔と府川唯未の娘がプロレスデビュー「ダメな試合をしたら、父と母まで悪く言われる」

【写真】元・プロレスラー田中稔と府川唯未の娘、田中きずな白熱のデビュー戦【7点】

デビュー戦のリングで堂々たる動きを見せた田中きずな。しかし、対戦相手の炎華も負けてはいない。こちらもデビュー戦とは思えぬマット捌きでしっかりと主導権を握っていく。

防戦一方の田中きずなは逆エビ地獄で苦しめられる。なんとかロープに逃げたい。手を伸ばしたロープの先には、客席で観戦している母・府川唯未の姿が……母と娘が一直線上に並ぶ名シーン! ただ、田中きずなはそこに母がいたことをまったく気づいていなかった。さすがにそこまでの余裕はなかったようだ。

客席からじーっと見つめていた府川唯未は「ずっと攻められていましたけど、心が折れていないのはわかったので」と、ここは母心よりも元プロレスラーの目で冷静に分析。 

その分析は間違っていなかった。ほんの一瞬の隙をついて田中きずなはサブミッションで反撃。この流れ、完全に両親へのリスペクトが込められているではないか!親の代から応援している観客からは、待ってました!とばかりに大きな声援が飛んだ。脳内のタイムマシーンは令和のリアルと平成の思い出を行ったりきたりで脳汁ダダ漏れである。これだからプロレスは長く見続ければ見続けるほど得をする。

そして残酷な現実。

試合時間が5分を過ぎると、ピタッと田中きずなの動きに切れがなくなる。明らかにスタミナ切れだ。自宅でのトレーニングでは父・田中稔が「プロレスはとにかくスタミナが大事だからな!」と口を酸っぱくして指導してきたというが、こればっかりはすぐにどうなるものでもない。気がつけば炎華の流麗なテクニックの前に田中きずなは3カウントを聞いていた。

バッグステージに戻ってくるや否や、田中きずなは泣き崩れた。床に突っ伏しての大号泣。インタビュースペースに移動すると気丈にコメントを出していたが、記者陣がいなくなると、また泣き出した。

どこかで見た光景……あぁ、そうか、若手時代の府川唯未もこうやって会場の片隅でよく泣いていたっけ。なんだか不思議な感覚だ。

5分後、同じ場所を通ると田中きずなはまだ泣いていた。デビュー戦の緊張感から解放されて、涙が止まらなくなっているのかと思いきや、とにかく同期に負けたことが悔しい、と彼女は言った。

AUTHOR

小島 和宏


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