この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、5月12(金）より公開される『ブラフマーストラ』。気になった方はぜひ劇場へ。
【写真】アメコミとヒンドゥー神話の融合、『ブラフマーストラ』場面写真【10点】〇ストーリー
ムンバイに暮らす天涯孤独の青年シヴァは、ダシェラ祭で出会った女性イーシャと恋に落ちる。それと時を同じくして、見知らぬ科学者が何者かに襲われ、ある物体を奪い去られるという不思議な幻視を見たシヴァは、科学者がその名を口にしていた芸術家のアニッシュ･シェティを探すことに。バラナシでアニッシュに出会うことができたシヴァとイーシャだったが、そこには幻視の中で科学者を襲ったジュヌーンらの姿があった。アニッシュが食い止めることで辛くも逃げ切ったシヴァたちは、すべてを知るというグルの寺院へと向かう。
そこで追っ手が手に入れようとしているのは、神々から授かった武器“アストラ”と、その中でも最強の武器とされる“ブラフマーストラ”であることを知らされる。ブラフマーストラが目覚めることで世界は滅びてしまう…。しかもシヴァはそれらの武器を守護する役割を担う秘密組織“ブラフマンシュ”に属していた人物の息子であり、偉大なる火の力“アグネヤストラ”を宿していると告げられる。果たして、シヴァは自らの運命を受け入れ、世界を救うことができるのか……。
〇おすすめポイント
長編初監督作品の『Wake Up Sid』(2009)、2作目の『若さは向こう見ず』(2013)に続いて、3度目のアヤーン・ムカルジーとランビール・カプールのタッグ作。
『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』や『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』などがインドのボックスオフィスにおいて初登場1位を記録するほど、インドではアメコミ映画ブームが到来している中で、ヒンドゥー神話とアメコミヒーローの要素を掛け合わせるというコンセプトのもとに誕生したのが『ブラフマーストラ』というわけだ。
『Wake Up Sid』を観てもわかるように、アヤーン自身がアメコミやハンナ・バーベラ、スタートレックといったサブカルチャーファンであることから、ただアメコミ映画ブームだからという軽いノリではなく、もともと根深いサブカル愛を独自の世界観として構築させてみせているのだ。
『心～君がくれた歌～』(2016)でのカメオ共演を除くと、がっつりとした共演は今回が初めてとなるランビールとアーリヤー・バットは、実生活でも交際(その後結婚した)していたことから、メタ的効果も加わり、何物にも勝るのは「愛の力」という、少々臭いテーマに妙な説得力をもたらしている。
また『若さは向こう見ず』や『Tu Jhoothi Main Makkaar』(2023)など、何かとランビールの作品にはゆかりの深い音楽監督兼作曲家のプリータムが手掛け、アリジット・シンが歌う作中曲「ケサリヤ」は、4か月程度で動画再生回数4億回を突破し、すでにインドにおいては、新たなラブソングとして定着している。
今作は「アストラバース」と名付けられたユニバース作品。2026年12月、2027年12月に新作の公開が予定されており、今後世界観が拡張されている。ほかにもアヤーンはリティク・ローシャン主演の「スパイ・ユニバース」の新作で、『RRR』のN・T・ラーマ・ラオ・ジュニアや『Pathaan』のジョン・エイブラハムも参加する予定の『ウォー2』で監督を務めることから、今後ふたつのユニバース作品を手掛けることになるのだ。
それ以外にも、インドの国民的ヒーローの『シャクティマーン』の完全新作やプラバース、サイーフ・アリー・カーン、クリティ・サノンといった南北スター共演の新作『Adipurush』、『Hanu Man』といったヒンドゥー神話を下敷きとしたヒーロー映画が今後も多く待機していることからも、今後インドではヒーロー映画バブルになることは間違いないだろう!!
〇作品情報
監督・脚本：アヤーン・ムカルジー
出演：ランビール・カプール、アーリヤー・バット、アミターブ・バッチャン、シャー・ルク・カーン、モウニー・ロイ、ナーガールジュナ・アッキネーニほか
2022年／インド／ヒンディー語／167分／シネスコ／5.1ch
原題：Brahmastra Part One:
Shiva／字幕翻訳：浅井華林／提供：ツイン、Hulu／配給：ツイン／G
公式サイト:brahmastra-movie.com
5.12 (Fri) ロードショー
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