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UPDATE|2023/08/19

マッコイ斉藤が感じるテレビ業界への危機感「従来のテレビはもっと幅広いものだった」

マッコイ斉藤 撮影/荻原大志

数多くの人気番組を手掛けたことから「バラエティ界のカリスマ」と呼ばれてきたマッコイ斉藤氏が、単行本『非エリートの勝負学』(サンクチュアリ出版) を出版した。タイトル通り「コネなし」「学歴なし」「経験なし」だった田舎の青年が、野武士のような泥臭い戦術でテレビ業界の頂点に登り詰めた様子が描かれており、発売から1カ月が経った今も世代や職種を超えて熱い支持を集めている。

【写真】“バラエティ界のカリスマ”と呼ばれる演出家・マッコイ斉藤氏【6点】

現在のバラエティ番組に対してイラつきを隠さないマッコイ斉藤氏は、「老害と呼ばれても結構」と前置きしつつ、「このままではテレビはヤバい」と現在の状況に最後通牒を突き付ける。誰よりもお笑いを知り尽くす男の緊急提言に耳を傾けてほしい。

「正直なところ、今の若い人たちはテレビなんて観なくなっていますよね。もうテレビを楽しんでいるのはお年寄りばかりだということになり、あるときから60代以上のスーパースターたちをたくさん番組で見かけるようになったじゃないですか。かと思えば『若者のテレビ離れを阻止しなくてはいけない』とか言って、慌てて人気YouTuberを出しまくるわけですよ。すべてがチグハグすぎます」

もうテレビではバラエティなんて必要とされていないのかもしれない──。テレビの申し子であるマッコイ斉藤氏ですら、最近はそう感じることがあるという。「報道」「情報」「料理」。視聴者が求めているのは、つまるところ、この3つだけではないかというのだ。

「この前、チャンネルをザッピングしていたらメシの紹介番組ばかりやっていたんですよ。さすがにギョッとしましたね。日本に来た外国人は『この国はグルメのプログラム以外は放送してはダメなんですか!?』と驚くそうだけど、それも当然ですよ。

人を傷つけない笑い? 優しい笑い? 別にそれはそれで結構です。でも時代の流れがそっちに進んでいるんだから、毒のある笑いを封印しろというのは大きなお世話。笑いって本来は『いじめではないものの、いじりではある』みたいなギリギリのラインで勝負するものもあるわけですから」

この主張は誰よりも視聴者が一番理解している。危険な魅力がテレビから排除されたことで、『まだYouTubeのほうがヒリヒリするね』と見放されるようになった。マッコイ斉藤氏に言わせるとテレビマンはいまだにYouTubeを一段下に見ているそうだが、もうとっくに足元をすくわれているというのかもしれない。

「テレビがつまらなくなったのは、ある意味、当然の話でもあるんです。だって『そんなのは古い』ってテレビ自体がお笑いを封印したわけだから。これは『本当に面白いものが観たいんだったら、YouTubeやNetflixのほうがいいですよ』と言っているも同然。YouTubeで爆発的に流行っている『BreakingDown』は『ガチンコ・ファイトクラブ』(TBS系『ガチンコ!』の人気コーナー)に似ていますし。今のテレビ局は『ガチンコ!』なんて作れないから、それを朝倉末来選手がやっているという感じに見えます。

『BreakingDown』が若者に支持されているのを見てもわかるように、要するに古いとか新しいとかは関係ないんです。『BreakinDown』の熱さとかヒリヒリ感って、本来ならテレビのお家芸だった領域ですよ。ところが今の地上波はブン殴るようなエンタメは拒絶する傾向にあるし、それどころか格闘技やボクシングの試合すら放送しない。もうスポーツ界から見放されているという言い方をしてもいいかもしれない」

CREDIT

取材・文/小野田衛 撮影/荻原大志


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