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UPDATE|2023/08/18

【何観る週末シネマ】狂気のチリ製ストップモーションアニメ『オオカミの家』

(C) Diluvio & Globo Rojo Films, 2018 (C) Pista B & Diluvio, 2023

この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、8月19日(土)より公開される『オオカミの家』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】ストップモーションアニメ『オオカミの家』場面写真

〇ストーリー
美しい山々に囲まれたチリ南部のドイツ人集落。“助け合って幸せに”をモットーとするその集落に、動物が大好きなマリアという美しい娘が暮らしていた。ある日、ブタを逃がしてしまったマリアは、きびしい罰に耐えられず集落から脱走してしまう。逃げ込んだ一軒家で出会った 2 匹の子ブタに「ペドロ」「アナ」と名付け、世話をすることにしたマリア。だが、安心したのも束の間、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえはじめる。怯えるマリアに呼応するように、子ブタは恐ろしい姿に形を変え、家は悪夢のような禍々しい世界と化していく……。

〇おすすめポイント
サイケデリックやドラッグトリップといった狂気的なアニメ作品といえば、フランスのカルトアニメ映画『ファンタスティック・プラネット』(1973)やフィル・ティペットが30年かけて地道に作り上げた『マッドゴッド』(2021)、リチャード・リンクレイターの『ウェイキング・ライフ』(2001)、あるいは日本でも『JUNK HEAD』(2017)や『燃える仏像人間』(2013)などがある。

しかし今作はまた違った意味での狂気的な作品といえるだろう……。

一度観てもらえれば、『ヘレディタリー/継承』(2018)や『ミッドサマー』(2019)などで知られるアリ・アスターが魅了されたというのも納得できるはずだ。

そんな『オオカミの家』を制作したのは、チリで活躍する二人組のビジュアル・アーティストのクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャ。今回が初の長編作品となっている。

カルトから逃げ出した少女マリアが、訪れた無人の家で体験する不安や恐怖といったマリアの精神世界と現実の間を壁や床、家そのものがキャンバスとして表現しており、予想もつかない展開とともに飛び出してくる奇想天外なアートの数々は、斬新という言葉では表現しきれないほどの狂気的な世界。そしてその世界観は、唯一無二である。

同時上映の短編『骨』も同じく、宗教や魔術などからもインスピレーションを受けた演出の数々は、トラウマとして記憶に残りそうなほどに恐ろしくも美しい。

〇作品情報
監督:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ
脚本:ホアキン・コシーニャ、クリストバル・レオン、アレハンドラ・モファット
声の出演:アマリア・カッサイ(マリア、アナ、ペドロ)、ライナー・クラウゼ(オオカミ)
2018 年 / チリ / スペイン語・ドイツ語 / 74 分 / カラー / 1.50:1 / 5.1ch 原題:La Casa Lobo(英題:The Wolf House) / 字幕翻訳:草刈かおり
映倫 G
8/19(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

(C) Diluvio & Globo Rojo Films, 2018
(C) Pista B & Diluvio, 2023

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