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UPDATE|2023/09/08

令和の世に問う「プロレスラーに強さは必要か?」永田裕志が正面から答えた!

撮影/松山勇樹

令和の世にあっても、プロレスラーに強さは必要なのか──? 昨今のマット界は華やかでショーアップされた試合スタイルが中心になった。かつてはファンも新日本プロレスの掲げた「キング・オブ・スポーツ」という旗印を信じ、異種格闘技戦やプロレスラーの総合格闘技進出に熱狂したものだが、今や両者は完全に別物というのが周知の事実となっている。だとしたら、強さを追求するトレーニング自体も意味ないのではないか?

【写真】プロレスラーと強さについて語る、永田裕志【6点】

 永田裕志は、学生時代にアマチュアレスリングで輝かしい成績を残してからプロレス入りした経歴を持つ。新日本入団後も、UWFインターナショナル対抗戦では桜庭和志や金原弘光といった実力者たちと好勝負を展開。結果的には惨敗したものの、ミルコ・クロコップやエメリヤー・エンコ・ヒョードルにも果敢に挑戦している。本記事の概要を永田に説明していると、言葉を遮るようにして「当然のことながら、プロレスラーに強さは必要です」と前のめりで語り始めた。

「このテーマに触れるなら、前提として『強いって何?』という強さの定義から考えなくてはいけませんよね。たとえばボクシングのルールで試合をしたら、ボクシングのチャンピオンが一番強いのはおわかりいただけるはずです。同様に柔道の試合だったら、柔道のメダリストが強いのは当たり前。『プロレスラーは強くないじゃないか』と主張する人がいるなら、それは強さの定義が狭いんですよ。おそらく競技的な意味……それもMMA(総合格闘技)的な面のみで強いか弱いかをジャッジしているんじゃないかな。

 もちろんプロレスでも格闘技的な強さは必要ですよ。でもそれだけでは絶対ダメで、たとえば試合を成立させるだけのスタミナも大事。それと重要なのはプロレスでは受け身があること。相手の技を必死で防御する競技系格闘技とは違って、あえて相手の技を正面から喰らうことで強さを誇示するわけですから。それは身体を鍛えていないとできないことだし、避けたいという気持ちに打ち克つ根性も求められる。倒れても倒れても立ち上がろうとするのも、メンタルとフィジカルの両面で強さがあるから可能なことです」

 同時に永田は、新日本プロレスの創始者・アントニオ猪木氏の思想“猪木イズム”も曲解されて世の中に伝わっているのではないかと危惧する。プロレスと格闘技の架け橋となったのは間違いなく猪木氏の功績だが、格闘技の試合で好成績を収めることが猪木イズムの本質ではないというのだ。
AUTHOR

小野田 衛


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