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UPDATE|2023/09/16

「ytv漫才新人賞決定戦」ラウンド1・トップ通過のぐろうが見せた漫才の形

ぐろう

大阪のお笑い賞レース「ytv漫才新人賞決定戦」のラウンド1が9月10日に放送された。芸歴10年以内という出場資格の中で、大阪を主戦場とするお笑いコンビ12組がしのぎを削ったが、トップ通過となったのは芸歴4年目の「ぐろう」だった。

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昨年はダブルヒガシが制したこの賞レース。ダブルヒガシはその後、「ABCグランプリ」でも悲願の大会を果たし、今も波に乗っている最中だ。「ABC」が漫才、コント、ピンネタありなのに対して「ytv漫才新人賞決定戦」は漫才のみであり、より純然たる漫才コンビの登竜門的な立ち位置となっている。

今年のラウンド1にはすでに準優勝の経験があるたくろう、昨年「M-1グランプリ」準決勝進出のハイツ友の会、劇場番長であるバッテリィズらが出場。各々が“らしい”漫才で評価を得ていく中、異彩を放っていのがぐろうだ。

漫才のテーマに選んだのは、一言で言えば「高級時計は特殊詐欺」というもの。「高級時計を買うのが夢」と話す高松巧に対して、家村涼太が「時間というのは大昔の人が決めたよくわからない概念。これを現代人が腕に巻いているということは、時空間を利用した特殊詐欺だ」と説いていく。

彼らが行うのは、いわゆる漫才コント(漫才中に設定コントに入る)ではなく、しゃべくりの漫才。しかし、ツッコミの高松が言葉を挟むターンは少なく、家村がまくしたてるように高級時計の無価値さを説明していく。屁理屈で素っ頓狂なことを言っているようにも感じる一方で、「確かに」とも思わされる説得力が家村の言葉にはあり、意味の分からない論理の強さはかまいたちの山内健司が漫才で見せるものとも通ずる部分がある。

2位で通過したハイツ友の会が共感と偏見を武器にした漫才であるならば、ぐろうはそこに独自の理論という分野をさらに加えたと言えるだろうか。全く新しいジャンルではないかもしれないが、ぐろうがひとつのスタイルを確立したことは間違いない。審査員である兵動大樹(矢野・兵動)も「着眼点がすごかった」と舌を巻いた。

パンクブーブーの佐藤哲夫からは高松に対して「強いツッコミがあれば」と課題も指摘したが、ぐろうの場合必要以上に家村の勢いを止めないのも魅力のように感じる。この助言を受け、ぐろうの漫才がどのような形に進んでいくかにも注目したいところ。今年のM-1グランプリでも1回戦ながら、その日の1位通過に選ばれており、年末に控える大舞台でもダークホース的な存在となるかもしれない。

なお、「ytv漫才新人賞決定戦」ラウンド1の放送はTVerでも配信しており、お笑いの新たな潮流を感じてみたい方は見てみてはいかがだろうか。

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AUTHOR

まっつ


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