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UPDATE|2023/10/05

死刑囚も“推し活”している!?獄中に届いていた最新アニメブーム、新旧アイドルの慰め

寝屋川市中1男女殺害事件の溝上浩二(旧姓・山田)死刑囚が描いたイラスト 撮影/西邑泰和

格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ。4回目のテーマは、死刑囚と「推し活」。なぜこのようなテーマに至ったか、きっかけは2005年に始まった、死刑囚の絵画や文章が展示される「死刑囚表現展」だった。彼らは獄中の中で一体どんな作品を制作しているのか? 生でそれらの作品を見て、作家・雨宮は衝撃を受けたという(前後編の後編)。文・雨宮処凛

【前編はこちら】死刑囚のイラスト展示に若者殺到、獄中作品から見えた秋葉原事件・加藤智大元死刑囚の心境の変遷

【写真】加藤智大ら死刑囚が描いたイラスト

「死刑囚表現展」に初めて行くまで、展示作品は、「写経」とか水墨画とか、事件への贖罪に満ちた文章だとか、そういうものだと私は勝手に思っていた。

しかし、初めて行った時、面食らった。そのような作品もあるにはある。が、他はカオス。きわどいヌードの絵があれば、お世辞にも上手いとは言えない自画像もある。また、昨年は、やたらと『鬼滅の刃』のイラストが多かった。「YOASOBI」の『夜を駆ける』の歌詞を描いたものもあった。このことに、私は衝撃を受けた。

死刑囚といえども、「こっち」のブームは届くのだ。私たちは同時代に生きているのだ、と。

また、不謹慎を承知で言うと、「推し活?」と思うような作品も多かった。

アイドルなのか芸能人なのか、女性を描いた作品。頑なに女性のヌードイラストばかりを描き、毎年応募し続ける死刑囚。

その中でも面食らったのが、寝屋川市中1男女殺害事件の溝上浩二(旧姓・山田)のものだ。加藤同様、ものすごい数のイラストを応募しているのだが、描いているのは『鬼滅の刃』をはじめとして、『呪術廻線』『SPY×FAMILY』『東京卍リベンジャーズ』などなど最新のアニメや漫画。一方、『ドラゴンボール』や『新世紀エヴァンゲリオン』『キャプテン翼』のイラストも描いている。

それだけではない。イラストの中には「乃木坂46」や「欅坂46」(現・櫻坂46)のメンバーもいれば、「BTS」の姿もある。そうかと思えば、86年に飛び降り自殺したアイドル・岡田有希子を描いたものもある。そう、溝上は決して若くなく、現在50代前半。50代でこのようなイラストばかり描くことには一種異様な感じを受ける。YOASOBIの歌詞を描いていたのもこの人だ。

ちなみにイラストは模写したかのように正確なのだが、「死刑囚表現展」の立ち上げに関わった評論家の太田昌国さんによると、獄中では本は購入可能、差し入れも一度に3冊までできるという。ということは、溝上は『少年ジャンプ』などを購読しているのだろう。

アイドルにも詳しいわけだが、死刑囚はDVDなどを自由に観られる環境にない。拘置所が指定したビデオリストの中から、処遇によって週に一度くらい観られるなどの規定になっているそうだ。そこにアイドルDVDはないだろうから雑誌のグラビアなどで見たのだろうか。YOASOBIの曲などは、ラジオで聴いたのでは、ということだ。ちなみに勝手に予測すると、今年の彼の応募作品には『【推しの子】』がありそうな気がする。


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