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UPDATE|2023/08/02

ゴールデンボンバー 鬼龍院翔が語るステージ論「音楽性よりエンタメに振り切ったほうが夢破れない」

ゴールデンボンバー 撮影/菅沼剛弘

格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ。3回目のゲストは、ファンから“推される”側の立場であるゴールデンボンバーの鬼龍院翔。バンドマンなどステージに立つ人へ向けた実用書『超! 簡単なステージ論 舞台に上がるすべての人が使える72の大ワザ/小ワザ/反則ワザ』(リットーミュージック)を出版し話題になっているが、実は本書はバンドマンならずとも、あらゆる仕事や人間関係に応用可能な優れた1冊だった。本書に込めた思いについて話を聞いた。文・雨宮処凛(前後編の前編)

【写真】ゴールデンボンバーの圧巻のライブショット【15点】

数少ない私の人生の自慢に、「ブレイク前のゴールデンボンバーのライブに行ったことがある」というものがある。

2010年頃のことだ。場所は高田馬場CLUB PHASE。まだテレビ出演などはしておらず、4バンドくらいが出るイベントに出ていた頃。

ちなみに彼らを知ったきっかけはYouTube。「なんか様子のおかしい人たちがいる!!」と思った瞬間、チケットを買っていた。ライブはと言うと、その日のバンドの中でもダントツの人気だったのだが、それからすぐ、ある「異変」に気がついた。

当時、私はやたらとヴィジュアル系バンドのライブに行っていたのだが、どのライブに行っても、女子トイレに入るとバンギャたちがゴールデンボンバーの話をしているのだ。もちろん、彼らはその日の出演バンドではない。それなのに、いつ、どのタイミングで行っても女子トイレは彼らの話で持ちきりなのである。

それから間もなく、あれよあれよという間に「エアーバンド」は大ブレイク。あっという間に武道館や紅白出演といった成功への階段を駆け上っていた。

この十数年、そんな彼らの姿を見ることは私にとっての大きな喜びであり、また暗いニュースが多い世相の中での滅多にない「いい話」でもあった。

ちなみに私は48歳で30年以上の歴史を持つバンギャ。「V系縄文時代」の生まれである。X やLUNA SEA、GLAY、黒夢、MALICE MIZERなどのブレイクをリアルタイムで見てきた「歴史の生き証人」だ(しかも私はGACKTさん加入直後のMALICE MIZERでバックダンサーをやっていた)。その時ぶりの、いや「お茶の間への浸透度」という意味ではそれ以上の、彼らの快進撃にどれほど励まされてきただろう。

そんなゴールデンボンバーの鬼龍院翔氏が4月、『超! 簡単なステージ論 舞台に上がるすべての人が使える72の大ワザ/小ワザ/反則ワザ』を出版した。この本は、芸人活動を経て20年近くゴールデンボンバーを率いてきた蓄積をマニュアル化したものなのだが、ステージに立つ人だけでなく、あらゆる仕事や人間関係に応用可能な優れた実用書であることに感銘を受け、このたび、お話をうかがった。

本書を読んで驚いたのは、「いい音楽さえ作っていたら売れる」的な思い込みが一刀両断されていることだ。「売れる」前提としていい音楽は必須に思えるが、なぜこの法則は成り立たないのか。まずそのことを問うてみると、鬼龍院氏は言った。


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