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UPDATE|2023/11/19

自己破産後の田上明、妻の独白「何不自由なく生活できるって…全然そんなことないですよ」

現在の田上明。現役時代の写真とともに。奥様の経営する『ステーキ居酒屋チャンプ』(茨城県つくば市)にて。 撮影/丸山剛史

四天王プロレスの一角を担って一時代を築いた田上明は、現在、妻の経営する『ステーキ居酒屋チャンプ』(茨城県つくば市)に常勤しながら余生を送っている。ノアの社長職を退いてからはほとんど表舞台に出る機会もなかったが、初の自伝『飄々と堂々と 田上明自伝』(竹書房)出版を機に封印していた過去を明かし始めているのだ。

【写真】愛娘とともにステーキ肉に包丁を入れる田上明、ほか撮り下ろしカット【9点】

 2016年のノアの身売り劇では、丸藤正道や杉浦貴などといった他の役員が取締役を辞任したため、田上1人で団体の負債4億円を抱え込むことに。その結果、自己破産を余儀なくされ、宅配便業者で仕分けのアルバイトをしながら生活を立て直していたという。また18年には胃がん発覚から胃の全摘出手術も受け、ファンを大いに心配させた。

 ENTAME nextは渦中の田上をキャッチすることに成功。だが、いざ取材を始めると、本人は質問をのらりくらりと得意の“ぼやき節”でかわす。「よく覚えてないな。そのへんの細かいことは、こいつに聞いてよ」そう言って声をかけたのが店内にいた妻だった。その結果、“田上明の苦労話を、夫人から伺う”という異質のインタビューが成立した。前後編の後編では現在の田上の生活を中心に話を聞いた。(前編は下の関連記事からご覧ください)

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「このお店もね、プロレスファンの方がわざわざ遠くから足を運んでくださったりするんですよ。この前なんて、ドイツのデュセルドルフから来たという方もいましたし。嫌なら調理はしなくてもいいから、せめてファンの方と一緒に楽しく写真を撮ったり、当時の話をしてあげてほしいんです。だけど実際は隅の席に座ってお酒を飲みながら“話しかけるなオーラ”を全開にしているものだから、そこで私としょっちゅう喧嘩になる(笑)」

 現役時代から無骨な男として知られていただけあって、スマートに愛想を振りまくことが苦手な様子のダイナミックT。しかしそんな朴訥としたキャラこそ、まさに田上の真骨頂ともいえる。「あんまりしつこくされると困るけど、応援していたって言われるとやっぱりうれしいよね」とはにかんだ。

「何をしたいとか、こうするつもりだとか、自分から能動的に動くことはまずしないんですよ。肉だって上手に捌けるくせに、『今からじゃもうできない』とかお客さんが来ているのに言うんですよね。何かあると、すぐ弱音を吐くわけです。ヤマト運輸での仕分けバイトにしたって、『家でゴロゴロしているくらいなら、短期でも働いてみたら?』って私が持ちかけた話で。とにかくまったくもって仕事をしたがらないので、ついつい私もキレてしまうんですよ」

 このあたりは力士時代から練習嫌いで知られていた田上の“ものぐさイズム”が、いまだ健在ということだろう。しかし愚痴をこぼしつつも、ファンやレスラー仲間に慕われ続ける田上の人望に対しては妻としても一目置いているようだ。

「不思議なんですけど、なぜか人には好かれるんですよね。松永さんもそうですし、ジャイアント馬場さんからもすごく可愛がってもらいました。ノアの社長になったときだってそうですよ。当時はすでに団体経営が傾いていたから、正直言うと貧乏くじみたいなところもあったんです。小橋(建太)くんも断ったという話ですし。だけど後輩レスラーたちが次から次へ主人のところに電話してきて『田上さん、お願いします!』と頼んできたものだから、断るに断れなかった。

もっともここまで経営状態が悪化していとは、蓋を開けてみるまでわからなかったですけどね。お人好しと言われたらそれまでかもだけど、いまだに選手やOGが主人の顔を見に店に訪れてくれるし、人を惹きつける要素があるんだとは思います。昔から野望とか上昇志向が一切ない人だから、それで周りが安心するのかもしれませんね」
AUTHOR

小野田 衛


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