FOLLOW US

UPDATE|2024/01/12

小津安二郎をリスペクトするドイツ人監督が描く現代の東京、重圧なテーマ・役所広司主演『PERFECT DAYS』

c 2023 MASTER MIND Ltd.

世界的に有名な映画監督といえば、エンタメ映画としては圧倒的に黒澤明だが、人間ドラマとしては、小津安二郎であり、世界中で愛されている。特に映画人の間では格別に評価が高い。

【写真】役所広司が魅せる静かな存在感…『PERFECT DAYS』場面写真【3点】

そんな小津の作品の大ファンでリスペクトしているドイツ人監督ヴィム・ヴェンダース。『アメリカ、家族のいる風景』(2005)や『世界の涯ての鼓動』(2018)で知られているが、ヴィム版『東京物語』ともいえる作品となるのが、現在公開中でゴールデングローブなどの海外映画賞でも高い評価を受けている、現代の東京を舞台にした『PERFECT DAYS』。

国内でも東京国際映画祭で話題となったことが記憶に新しい。

ヴィム・ヴェンダースといえば、過去に『東京画』(1985)というドキュメンタリーを撮っている。この作品は、鎌倉にある小津の墓を訪れたり、当時の日本の日常風景を映し出したものであったが、今作においても着眼点としては、近いものを感じずにはいられない。ほかにもいくつかのドキュメンタリーを撮っているが、今作は劇映画とドキュメンタリーの中間のようなテイストに仕上がっている。

今作は、役所広司演じる、東京のトイレ清掃員の仕事をする孤独な男の数日間を淡々と映し出した物語であり、セリフもあまりない。確かに現実では、映画やドラマのように、日常生活において、ひとりでいる際に言葉を発しないのだから、そこにもリアリティを感じてしまうのだ。

セリフが無いからといって物語が理解できないのかというと、決してそうではなくて、セリフではなく、役所の表情と自然と漂う哀愁によって、徐々に人物像が描かれていく。観客側も平山がどういった人物で、どういった過去があるかなどを探求する楽しみを見出すことができ、目が離せなくなるのだ。


RECOMMENDED おすすめの記事