しかし事務所で最後に行った仕事が、思わぬ展開を見せる。マッチングアプリ「YYC」の広告モデルとして一躍脚光を浴びたのだ。
「当時はマッチングアプリが流行りだしたばかりで、まだ世間的には出会い系サイトのようないかがわしいイメージを抱く方のほうが多かったと思うんです。でも私はとにかくお仕事が欲しかったので、ほとんど詳細を確認しないままエントリーをして(笑)。
二次で水着審査があると気づいたのも、書類審査に通った段階でした。予定外ではありましたけど、やるからには粗末な体を見せたくないと気合いを入れてダイエットをして、水着審査に臨みました。
面接は一人ずつだったので、『水着になってください』と言われたときに、私はその場で服を脱いで水着姿になったんです。でもどうやら普通は別室で着替えて戻ってくる感じだったみたいで(笑)。広告モデルに採用されてから数年後に担当の方から『あの日、その場で脱がれた衝撃が忘れられなくて』と採用理由の1つになっていたことを教えてもらいましたね」
だが、広告撮影の直前に事務所が解散宣告。所属タレントとして最後の仕事になることが確定していた。
「今後フリーになるのに、私のイメージが良くない方向に付いてしまうのだけは避けたいなと思って、クライアントの方にちゃんとした会社なのかとかしつこいくらいに確認させていただきましたね。
クライアントの方も私の不安を汲んでくださり、丁寧に説明してくださったので安心して撮影に挑むことができました。安心させていただいた以上、私からもちゃんと発信しようと思って、自分が出ている広告を見つけては片っ端からいいねしたりリツイートしたりしてインプレッション率を上げました。覚悟を決めて水着にもなったので (笑)!
それだけじゃなく、『この子誰?』みたいなツイートには自分から名乗り出たりもしていくうちに、どんどんと広告の再生数が伸びていきました」
YYCの広告モデルを始めてから間もなくコロナ禍になり、マッチングアプリの需要も高まっていった。
「コロナ禍がなかったら、今もマッチングアプリへの偏見は残っていたんじゃないかなと個人的には思っています。実際、広告が世に出るまでは友達から『マッチングアプリの広告に水着で出て大丈夫なの? 今後の仕事に影響はないの?』って心配されました。
正直、私もどうなるのか分からなくて、祈るような気持ちで過ごしていたんですけど、今では若い方も普通に利用しているし、マッチングアプリ婚も珍しくありません。今では人気のあるモデルさんや俳優さんも公告に出ていらっしゃるので、それに先駆けて広告モデルをやらせていただいたのは本当に光栄なことだなと思います」
(取材・文/猪口貴裕)