脚本:宮藤官九郎、主演:阿部サダヲによるTVドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)の第5話が、2月23日に放送された。今回は非常に衝撃的なエピソードだったといえるだろう。(以下、ドラマ第5話のネタバレを含みます)
【関連写真】『不適切にもほどがある!』第5話にゲスト出演したファーストサマーウイカ【4点】1つ目の衝撃は、第4話のラストで市郎(阿部サダヲ)のことを「お父さん」と呼んでいた謎の男の正体が、純子(河合優実)の夫・犬島ゆずる(古田新太)だったこと。純子の相手は、キヨシ(坂元愛登)ではなかったのだ。2つ目の衝撃は、渚(仲里依紗)はゆずると純子の間に生まれた一人娘だったこと。すっかり市郎と渚の時空を超えたラブストーリーが展開するものと思いきや、まさか祖父と孫だったとは。
そして3つ目の衝撃は…これが最大の驚きだったのだが…市郎と純子は阪神・淡路大震災に巻き込まれ、1995年に命を落としていたこと。昭和と令和のギャップをつまびらかにするタイムトラベル・コメディと思って観ていたら、突然“震災”という過酷な記憶がドラマに侵食してきたのだ。
思い返してみれば、宮藤官九郎は連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)で東日本大震災を、大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』で(2019年)関東大震災を物語に織り込んでいた。舞台や時代設定を考えれば、それは決して避けられるものではなかっただろう。だが『不適切にもほどがある!』では、わざわざゆずるの実家を神戸という設定にしてまで、阪神・淡路大震災を物語の中心に据えている。そこには、作り手の確固たる意思があるはずだ。
第6話の予告編で、市郎は1986年に戻ったことが示唆されている。9年後に発生する、阪神・淡路大震災までのカウントダウン。確かに、“来たるべき日”までに父と娘が親子の絆を取り戻していく物語が描かれるなら、それはそれなりに感動的だろう。だが、感動を呼び起こす装置として震災というモチーフを用いることは、あまりに危険だ。