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UPDATE|2024/04/05

宮藤官九郎の原点をドラマ化『季節のない街』で描かれる家族像「今の人が見たほうが“刺さるはず”」

宮藤官九郎、渡辺大知 撮影/武田敏将

宮藤官九郎が、自ら企画、脚本、監督を務めたドラマ『季節のない街』(テレ東系)が、昨年夏のディズニープラスでの先行配信を経て、地上波での放送がスタートする。黒澤明『どですかでん』の原作をベースにした作品で、12年前に起きた“ナニ”の大災害をきっかけにすべてを失い、仮設住宅で生活を送るようになった人々の日常や、そこに住む若者たちの葛藤をユーモラスに描いた群像劇。4月5日からの地上波放送を前に、宮藤監督と同作に酒屋の青年・オカベ役で出演した俳優・渡辺大知氏にインタビューを実施。ドラマ『季節のない街』の見どころを聞いた。

【写真】池松壮亮主演、『季節のない街』場面写真【24点】

──宮藤さんは、黒澤明監督の『どですかでん』が20代の頃からもっとも好きな映画とのことで、今回のドラマ化に至った経緯を教えてください。


宮藤 ちょうど『いだてん』(NHK)を書き終えたあとで、少し疲れていたタイミングでドラマ化したいテーマを聞かれたんです。それからすぐにコロナ禍になり、世の中がストップした感覚があったんですよね。そんななかでいろいろと企画を考えるうちに、自分が昔からやりたいのは『どですかでん』だ、つまり『季節のない街』だと気づいて提案しました。それから多くの方々に協力してもらい、ドラマ化が実現しました。

──思い入れが強いからこその作り手としての難しさはありましたか?

宮藤 でも“自分がやりたいこと”だったので、不思議と難しさは感じなかったです。ただ、一話完結の30分ドラマなので、時間内に収めなきゃいけない大変さや、(渡辺)大知くんが演じてくれたオカベは、原作でも「がんもどき」のエピソードだけに出てくる登場人物なので、1話からどうやって(主要人物である)青年部に加わってもらうかなど、構成は悩みましたね。

渡辺 岡部少年は、映画でもそれほどフィーチャーされてないですよね。僕もオファーをいただくよりも前に『どですかでん』を観たことがあったんですけど、岡部少年がどんな役だったか思い出せなくて……。でも、なぜか印象だけは残っていたたので、『季節のない街』でのオカベも“どんなヤツかは覚えてないけど、存在感がある男”になれたらいいな、と撮影に臨みました。改めて映画を見返したら、ちょっとお節介焼きというか、キメキメのかっこつけてるキャラクターでした(笑)。

宮藤 映画の岡部少年はドラマほどいいヤツでもないしね。個人的に『どですかでん』に寄せたい部分と、まったく別物にしたい部分が両極端で、オカベのキャラクターは後者。細部を見ると『どですかでん』なんだけど、引きで見ると違う作品にしたい、とは考えてました。

──たしかに、ドラマのオカベは朗らかな印象でした。作中では、街でいちばん内気なかつ子(三浦透子)に恋をしますが、役作りではどんな点を意識しましたか?

渡辺 じつは、撮影が始まってから思いついたんですけど、小学校時代の同級生の男子をオカベのモデルにして演じていたんです。

宮藤 へぇ!

渡辺 小学生の頃は、彼と仲が良かったわけでもなかったんですけど、成人式のときに「大知くん久しぶり!」と、元気に背中を叩かれたんです。話をしていると、小学校を卒業してからも担任の先生と毎月のように連絡を取り合っていると言っていて、とても驚いたんです。お世話になった相手に、人一倍愛情を持って関わり続ける彼の姿と、大好きなかっちゃん(かつ子)を見ると周りが見えなくなるオカベのイメージが重なったんですよね。

──身近な人が役に影響を与えることもあるんですね。

渡辺 そうですね。オカベに“世界のどこかに存在する人物”という説得力を持たせたくて……「ちょっと世間からズレてるけど、アイツならそうするだろうな」なんて考えながら演じていました。

宮藤 増子(直純)さんも言ってたなあ。「みんなは六ちゃん(濱田岳演じる“見えない電車”を毎日1人で運転する青年)がヤバいって言うけど、オカベも相当ヤバい」って(笑)。

渡辺 そんな……(笑)。


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