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UPDATE|2024/05/25

【何観る週末シネマ】南インドを代表する俳優たちが集結!壮大なオールスタームービー『PS1 黄金の河』

© Madras Talkies ©Lyca Productions

この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、現在公開されている『PS1 黄金の河』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】『PS1 黄金の河』場面写真

〇ストーリー
10世紀、南インドで繁栄を極めるチョーラ王朝。しかし王が病に伏し、臣下たちはその息子ではなく、従弟を次期国王として擁立することを画策する。2人の王子が領土拡張のためそれぞれ北方と南方で戦いを繰り広げる中、父と共に都に残る聡明な王女。遠く離れた3人だが、不穏な動きを察知し、共にこれに対抗すべく密使を送り出す。密使に選ばれた若く陽気な騎士・デーヴァンの壮大な旅が始まった……。

〇おすすめポイント
日本でも公開された『ボンベイ』(1995)では、暴徒化したヒンドゥー教至上主義のなかで奮闘する夫婦の物語を描いた社会派監督マニラトナム。そんなラトラムの新作は、前後編構成による、壮大なスケールの歴史スペクタクル。

第一線で活躍するタミル語映画のスターたちによるオールスタームービーで、豪華さがにじみ出ている。

第95回米アカデミー賞において『RRR』や『カンタラ』などと並んで、作品賞のショートリストに選出されていたインド映画のひとつでもあり、第16回アジアン・フィルム・アワードでも作品賞にノミネートされていた世界的な話題作がついに日本公開というわけだ。

ビジュアルからはS.S.ラージャマウリ監督作『バーフバリ』を連想するかもしれない。しかし、ラージャマウリのように数分に1回のペースでクライマックスがくるようにエンタメ性を重視し、画として楽しませるというよりは、マニラトラムの場合は、ストーリーを常に大切にしている監督といえるだろう。

王座を奪い合う構図という点では、公式が公言している通り、インド版「ゲーム・オブ・スローンズ」といえるだろう。

一応、アクション活劇的なビジュアルではあるものの、アクションシーンに関しては、IMAXなどの環境で観ればまた違ったのかもしれないが、そこまでの迫力は感じられないし、全体的にゆっくりで心に残るほどのインパクトやスピーディー感はなかった。

ただしストーリーの深さがそれを補っている。とくに前編である今作においてはキャラクター同士の対話と駆け引きが中心となって構成されている。キャラクターが多いこともあり、ある程度は南インドの歴史を知っている必要性もあるが、それでも会話劇の緊張感には引き込まれる。

さらに、インド映画音楽の巨匠であり、インドからグローバルアーティストを育成することを目的としたプロジェクト「NEXA Music」などでも知られており、テイラー・スウィフトとのコラボも噂されるA.R.ラフマーンが音楽を手掛けたことで、シーンのひとつひとつに、より深みをもたせている。

『ボンベイ』もそうたが、シャー・ルク・カーン主演でヒンディー語映画に挑んだ『ディル・セ 心から』(1998)でも障害のある恋を描いていたマニラトラムだけに愛憎劇を描くのが得意な監督でもある。


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