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UPDATE|2024/06/21

『燕は戻ってこない』Pに聞く、貧困・不妊治療・女性向け風俗…繊細なテーマをドラマ化した理由

『燕は戻ってこない』第8話 写真◎NHK

ドラマを“ながら見”する人は少なくないが、4月から放送されている『燕は戻ってこない』(NHK総合・火曜22時~)はながら見などさせてくれないほどの引力を持ったドラマだ。桐野夏生氏の同名小説が原作の本作は、貧困状態から脱するために代理出産の代理母になることを決意した“リキ”こと大石理紀(石橋静河)を中心にストーリーが展開される。貧困問題、不妊治療、女性向け風俗など、女性に関するセンシティブなテーマをストレートに表現した本作のプロデューサーを務める板垣麻衣子氏に、ドラマ化に至った経緯、キャスティングの背景など話を聞く。

【別カット】『燕は戻ってこない』、キャスト陣の細やかな演技に感嘆

まず『燕は戻ってこない』をドラマ化した背景について「とにかく原作が面白くて登場人物が魅力的。生殖医療という今日的なテーマを扱っていることにも惹かれ、『これはドラマ化したい』と思いました」と答え、具体的な理由を話し始める。

「原作を読んでいると『人の命って何なんだろう?』『お金を払えば代理出産を利用しても良いのか?』など、白黒ハッキリ決めることが難しい問いかけを矢継ぎ早にされている感覚になりました。昨今、何かにつけて善悪を簡単に判断する風潮が根強く、恐怖感や不安感を覚えていました。本作を通して簡単に判別できない問いに、向き合っていくための姿勢を示したかったことも大きいです」

また、板垣氏は本作を制作するうえで“代理出産=悪”と解釈されないように特段気を配っていると説明。

「不妊治療をしている友達は結構いるのですが、話を聞くと切羽詰まるほどに苦しんでいます。『代理出産という選択肢があれば利用したかった』と考える瞬間があるかもしれません。代理出産を利用すること、代理母に応募することなど登場人物のあらゆる選択をただ単に否定的に捉えられないように、『みんなにはみんなの事情がある』『すごく悩んだ末にその選択をした』といったことが伝わるように気を付けています」

本作と言えば、リキと日高(戸次重幸)の性行為シーンやリキが女性向け風俗のサービスを受けるシーンなど大胆なシーンが目立つ。コンプライアンスが厳しい時代ではあるが、過激な表現を放送することに葛藤はなかったのか聞くと、「原作に描かれている重要なシーンなので、映像化したいと思いました」という。

「生殖をめぐる作品ですので、セックスとはどうしても切り離すことはできません。セックスシーンはインティマシー・コーディネーターの方からいろいろ助言をもらいながら、できる範囲内で細心の注意を払いながら表現しました」

キャスト陣の繊細な演技もストーリーを重厚にしている。キャスト陣について板垣氏は「『この方々に演じてほしい』と思っていた皆さんに引き受けていただきました」と希望通りのキャスティングだったという。

「リキは夢もお金も自信もないところからスタートしますが、もがきながらも前に突き進もうとする役です。石橋さんは心に芯があるというか、ロック魂がある役者と考えており、『彼女のその強さに賭けたい』という思いからオファーしました」

AUTHOR

望月 悠木


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