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UPDATE|2022/02/09

南果歩が語る、幼少期から現在まで波乱万丈の女優人生「小さい頃の苦労経験は強み」

南果歩 撮影・田中健児



――家の事情が複雑でも悲観せずに、その環境に合わせた楽しみ方を見つけていくのが印象的でした。

南 子どもだから辛さが分からないんですよ。後で振り返ってみると、大きい家からお風呂のないギューギューの文化住宅に引っ越しをして、絵に描いたような没落なんです。でも、それはそれで楽しくて、お風呂屋さんに行くのも面白かったんです。子どもって柔軟性があると思うんですよ。たぶん当時だって我慢していた部分はたくさんあったと思うんですけど、親に不平不満を言ったら可哀相だし、一生懸命やってくれているのも感じていましたから。

それが苦労といえば苦労かもしれないですけど、小さいときにそういう経験をしているのは強みでもあるんです。余計な苦労はしなくてもいいですけど、何一つ無駄な経験はない、どんな経験も自分の栄養になるんだと思っていて。ましてや子どもだから回復力はめちゃめちゃ早いし、与えられた場で楽しめるものなんです。

――周りの目は気にならなかったですか?

南 やっぱり広いおうちのほうが良かったですけど、そこから母の采配で文化住宅からちっちゃい一軒家、ほどほど大きい一軒家から、さらに広い場所へと、ちょっとずつおうちが大きくなっていきました。そのときに母はすごいなって尊敬の念も湧いてきましたし、そもそも人と比べない性格なんです。この人はいいなとか、あまり感じないんですよ。

――このお仕事を始めてからも人と比べることはなかったんですか?

南 ないですね。それをやってしまうと、自分のマイナス部分ばかり感じるようになるじゃないですか。あの人に比べて私は背が低いとか、目が小さいとか……。ありがたいことに俳優業は、いろんな人がいていいんです。いろんな人がいるべきだし、若ければいいってものでもないし。その年齢に応じた人間を演じる訳だから、ずっと楽しい仕事なんです。素敵な先輩方とも共演をさせていただける機会が多いので、10年先、20年先、どういう風に年齢を重ねて、どういうものができるかと考えただけで楽しみです。次に進もうという気持ちが強いんでしょうね。

――若い俳優さんが、その境地に達するのは難しいのではないでしょうか。

南 私の場合、若いときは必死過ぎて、周りが目に入らなかったのもあって人と比べなかったんです。それに同じ役を演じたとしても、私たちは生体一つで表に出るので、別の方がやったら別物なんですよ。それに究極な話、「役が俳優を選ぶ」と思っています。役との巡り合わせなんです。だから「やりたい!」と思って、やれなかった役もあるんですけど、それは縁がなかったと思って、そこに固執しないですね。(中編につづく)

【中編はこちら】南果歩がライフワークの海外一人旅を語る「初対面の人も平気、私はどこでも生きていける」
AUTHOR

猪口 貴裕


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