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UPDATE|2022/05/14

国際政治学者・三浦瑠麗が語る“フェミニストと不倫”の今後「あらゆるものを排除していいのか?」

三浦瑠麗 撮影/松山勇樹



──『不倫と正義』でフェミニストと不倫の今後の関係について、三浦さんは「女性は性的魅力をしたたかに武器に変えて、奪いたいものは奪うし、ステップアップにも使うし」となるのか、「とにかく性的にふしだらなものは許さん」という方向に行くのか分からないとおっしゃられています。現状、SNSを見る限りは後者の傾向が強いように感じます。

三浦 かつてはフェミニズムの中にも社会的規範から解き放たれて自由に性を謳歌するという考え方が強くありました。結婚に縛られない、誰としてもいいと。一方、当時の左派的な社会運動には女性差別が色濃く残っていました。日本で女性の権利を守ろうとするとき、自由なだけではなかなか生きていけない。結婚をすれば不当な扱いを受ける。そのため、専業主婦の地位を守ることが重要でした。現に、遺産相続や離婚をめぐっては、日本は専業主婦の地位が保全されています。

ただ、これはあくまでも男女が対等でないことを前提にした、過去からの「進歩」ですよね。性的自由も、夫からの自由である場合が少なくなかった。次の次の世代ぐらいになったら、性的自由が高まって男女ともに魅力を武器にというのが肯定されるのかな。でも現状、フェミニズムがどういう方向にいっているかというと、キャンセルカルチャーの方が強くなっていますね。先日も日経新聞(日本経済新聞)の広告がバッシングされましたでしょう?

──今年4月4日、日経新聞朝刊に『月曜日のたわわ』というマンガの全面広告が掲載されたことが炎上した件ですね。

三浦 はい。確かに、上等な広告ではないし、日経っぽくもないけれど、ありとあらゆるものを排除していっていいのだろうかというのはあります。若い女性を性的対象としてみるな、消費するなという一方で、女性が若い男性に性的な喜びを求めたり、露出の高い服を着るのは自由だという主張を両立させるのは微妙なところがあります。まあ、人間の生きづらさは女も男もあるものなので、なかなかみんながハッピーな合意できる解にはたどり着けないでしょうね。

──最後に改めて、『不倫と正義』で中野さんと対談してみて新たに発見したことなどがあったら教えてください。

三浦 私は、人間の感情や理性、社会的動物としての行動に着目して考えてきたんですけど、それを制御する脳内物質の働きなどを中野さんに教えていただき、非常に勉強になりました。あと、そこまで遠慮しすぎることなく対等に、だけどお互いに踏み込みすぎることもなく、率直に話ができる女性同士の対談は稀です。こういう社会的な話題を女性二人で、骨太に論じられるというのは良い時代が来たなと思いました。
AUTHOR

猪口 貴裕


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