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UPDATE|2022/08/15

書道家・涼風花「大河ドラマ『おんな城主 直虎』リハ分も含めて写経10枚が大変だった」

涼風花 撮影/荻原大志 



──お祖母さんを喜ばせたいというところから書道家としての活動がスタートしたのですね。

涼 たとえ時代劇に出られなかったとしても、書道家として「題字を書きたい」という夢を新たに掲げて始めました。数年後、夢かなって土曜時代ドラマ『そろばん侍 風の市兵衛』(NHK)で題字を書かせていただいたんですけど、祖母は番組ポスターをあちこちに配りまくっていましたね(笑)。ほかにも、『美文字練習帳』とか、私がラベルを書いたお酒とか、そういうものは全部買って近所中に配りまくっています。

──涼さんの活躍がやはりうれしいんでしょうね。お酒のほか、地元でのお仕事も多いんですか?

涼 SLのヘッドマークを書かせていただいたりしましたし、栃木では私が書いた文字を見かけることも多いかもしれないです。書道で地域に貢献できているのならうれしいです。

──涼さんが考える、手書きの良さというのはどういう部分だと思いますか?

涼 うーん、やはり味があるところですかね。活字だと良くも悪くも癖がないので、頭に残ることが少ないじゃないですか。その点、手書きだとすっと人の心に入ってくるものがあるというか、「上手い」でも「下手」でも、何かしらの感想が生まれると思います。

──確かにそうですね。どうしたら読みやすい綺麗な字が書けるのでしょう?

涼 しっかり留め、ハネ、はらいなどを意識して気を付けて、ゆっくり書くのが大事かなと思います。急いで書いた字はやはり読みにくくなってしまうので……。あとは、そもそもまっすぐ線を書くのはすごく難しいので、まずはまっすぐな線を書く練習をしてみるとか、文字を等間隔に書くことを意識してみると綺麗な字が書けると思います。

──字が上手くなる練習法はやはり書くことでしょうか?

涼 そうですね、とにかくお手本を写しまくることがポイントです(笑)。お手本を横においてもコツをつかめないことが多いと思うので、実際にその上から書いてしまうとより分かりやすいです。黒い線を見るのではなくて、白い余白がどのぐらい空いているのかを考えるとさらに上達していくと思います。

──打ち込むことが増えた現代では、字の余白を気にしなくなっている方も多いでしょうし、意識するだけでも変わりそうです。涼さんのこれまでのお仕事の中で、特に大変だったものはありますか?

涼 大河ドラマで書いた、花押(公家や武家が発行した文書の最後に書いたサイン)です。誰にも書けないようにわざと複雑にしてあるので、お手本のように書くのが難しくて(笑)。あとは書道指導のときに、女優さんにとって難しいものは私が代わりに書くのですが、その枚数がすごくて!

──本番に使う1枚+予備程度ではないと?

涼 大河ドラマの場合は、リハーサルで使用する分もすべて必要なんです。たとえば、女優さんと主役の方が口論になって、写経をくしゅくしゅって丸めて捨てるシーンがありました。そこで「リハーサル分も含めて写経を10枚お願いします」って言われたときは「嘘……。リハはコピーでも良くないですか?」ってこっそり思いました(笑)。全部手書きで書くのは、体力的にきつかったです。

──改めて聞くと、裏側で本当に大変な作業をされているのですね……。今度から注視してみます(笑)。

涼 小道具作りのほかにも、「筆のこのあたりを持ってください」というような指導もしています。ここだけの話、大河ドラマってたとえ「姿勢大丈夫ですか? 」「はい」っていうような確認作業だけだったとしても待ち時間がものすごく長いんです。テレビ局に1日いるとかもあります(笑)。

>>後編はこちら

(取材・文/池守りぜね)

▽涼風花(りょう・ふうか)
1985年10月12日生まれ、栃木県出身。2010年に「美人過ぎる書道家」として注目を集め、NHK大河『直虎』『西郷どん』等で書道指導と書状書きの手元吹き替えを行うほか、商品ロゴや番組タイトルなども手掛けている。主な著書は『美文字練習帖』『美の書道』『20日で驚くほど上達、美文字練習帳』。
Twitter:@ryo_official
CREDIT

取材・文/池守りぜね 撮影/荻原大志 撮影協力/小杉湯となり


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