メインのロケ地となった福岡県中間市の全面協力により、ロケ地では迫真のシーンが実現、リアルでダイナミックな画面作りに結実した。
「中間市の現市長、福田健次は元俳優で、俺が前にいた夏木プロダクションの同期なの。中間市も過疎化が進んでいるから、いい宣伝になるだろうし、町ぐるみで応援してくれたよ。市民デモのシーンがあるじゃない? あれも普段からデモで現体制に反対している人たちを、『いつもデモしている人たちを集めましょう』って市長が自ら集めたんだから(笑)。いつもデモしているから芝居じゃない。プラカードも自分たちで持っているしね。撮影中は、言葉は悪いけど、中間市全体が巨大なロケセットみたいな感覚だった。市長に『あそこを使いたいんだけど』って言ったら、『分かった。ちょっと聞いてみるよ』と、そんな感じだったからね」
小沢を慕う有志たちが集まった後援会「九州小沢会」の存在も映画には欠かせないものだった。
「決してビッグバジェットの映画じゃないけど、現場に出るとNetflix級だからね。たくさんテントを張って、そこにラーメン、チャーハン、おでん、お好み焼きが並んでいるんだから、もはや縁日だよ。さらに小沢会が炭で肉を焼くんだ。それとは別に弁当もあるんだぜ。お菓子の差し入れも半端なくて、お菓子だけドーンと並べた車も用意している。みんな撮影が終わる頃には、『太った』って言うんだ(笑)。食い物だけじゃない。冒頭の拘置所を作ったのも小沢会。俺は畳じゃなくて、アメリカみたいな拘置所を作りたかったんだ。でも、いいロケ地がない。けど、九州小沢会のトップが福岡一の解体屋だから、一から全部作ってほしいと頼んだの。そしたら中間市に潰れた病院があって、もう壊すだけだから、そこにパネルを貼って。便所、洗面台、窓外の鉄格子まで、九州小沢会が作ったセットなんだ。
【後編はこちら】小沢仁志“還暦記念映画”にかける思い「CGなし、スタントなし、俺の魂の熱さを感じてほしい」