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UPDATE|2023/01/27

【何観る週末シネマ】吉田美月喜と常盤貴子が“若年性乳がん”と“恋愛”に揺れ動く母娘を演じる

(C)2023 映画「あつい胸さわぎ」製作委員会

この週末、何を観よう……。今週公開の作品の中から、映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、1 月 27 日(金)より公開されている、恋愛と病気に立ち向かう心の揺れ動きを描く吉田美月喜主演の『あつい胸さわぎ』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】吉田美月喜主演・『あつい胸さわぎ』場面写真【5点】

〇ストーリー
港町の古い一軒家に暮らす武藤千夏(吉田美月喜)と、母の昭子(常盤貴子)は、慎ましくも笑いの絶えない日々を過ごしていた。小説家を目指し念願の芸大に合格した千夏は、授業で出された創作課題「初恋の思い出」の事で頭を悩ませている。千夏にとって初恋は、忘れられない一言のせいで苦い思い出になっていた。その言葉は今でも千夏の胸に“しこり”のように残ったままだ。だが、初恋の相手である川柳光輝(奥平大兼)と再会した千夏は、再び自分の胸が踊り出すのを感じ、その想いを小説に綴っていくことにする。一方、母の昭子も、職場に赴任してきた木村基春(三浦誠己)の不器用だけど屈託のない人柄に興味を惹かれはじめており、20 年ぶりにやってきたトキメキを同僚の花内透子(前田敦子)にからかわれていた。親子二人して恋がはじまる予感に浮き足立つ毎日。そんなある日、昭子は千夏の部屋で“乳がん検診の再検査”の通知を見つけてしまう……。

〇おすすめポイント
『ひとよ』(2019)や『朝が来る』(2020)など、行き場のない想いを描いた作品を得意とする脚本家・高橋泉が劇作家・横山拓也の同名戯曲を映画としてアレンジしてみせた本作。

今作は決して闘病映画ではない。極端なほどにドラマチックに描くのではなく、日常に潜む影、もしくは突然訪れる恋のように乳がんというものを描いている作品といえるだろう。

乳がんは早期発見で治る病だとされているが、ステージが進むにつれてその生存率は低下していく。人それぞれで進行のスピードや転移のリスクも変わってくる。胸を切除したからといって必ず治るという保証もない。妊娠中であれば抗がん剤や放射線治療もできない。だからといって、そのままにしておくと確実に命に危険が及ぶ。

筆者は末期の乳がんで妻を亡くしている身として、早期発見であるなら助かる道を選ぶべきだとは思うが、それは年齢や立場によっても大きく異なってくるだろう。

大人にだって難しいというのに、乳がんの違和感なのか、恋のときめきなのか……。そんな不安と戸惑いが共存し、まだまだ将来の見えない大学生の千夏にとって、命のリスクを選択することがいかに重圧なものかを想像するだけで心苦しいが、そんな主人公の心の揺れを『メイヘムガールズ』(2022)や『たぶん』(2020)などでも注目された吉田美月喜が見事に体現している。

本人の不安や恐怖はもちろん、周りが何をしてあげられるのか、何をしてあげるべきなのか、それぞれの立場から、病にどう立ち向かうべきなのかを描いていて、普段と変わらない周りこそが一番優しいのかもしれないと感じさせる、そんな作品だ。

〇作品情報
監督:まつむらしんご
原作:戯曲『あつい胸さわぎ』横山拓也(iaku)
脚本:髙橋泉
出演:吉田美月喜、常盤貴子、前田敦子、奥平大兼、三浦誠己
佐藤緋美、石原理衣ほか
配給:イオンエンターテイメント/SDP
公式サイト: https://xn--l8je4a1a7e6m7952c.jp/
1 月 27 日(金)新宿武蔵野館、イオンシネマほか全国ロードショー

(C)2023 映画「あつい胸さわぎ」製作委員会

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