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UPDATE|2023/02/27

高梨臨が振り返る女優への道、軽い気持ちで始めた仕事を変えた「高橋玄監督の一言」

高梨臨 撮影/田中健児



2012年には世界的に高い評価を得ているイランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督の手がけたフランス映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』で主演を務め、大きな話題を呼んだ。

「オーディションで選ばれたんですけど、そのオーディションが変わっていて。監督から何語か分からないセリフを喋るように言われて、喋っているところを撮影されるんです。そんなオーディションが4回ほどあって。1回目の時に監督から『君がいいと思う』と言われたんですけど、通訳の方を通して、『でも君は、ちょっと背が高いから足を切ってもいいかな?』と冗談なのか冗談じゃないのか分からないことを言われて。怖いので真面目な顔をしたら、『冗談だよ。ハハハ』みたいな(笑)。それでオーディションに呼ばれ続けて、同じようなやり取りが毎回あって、最終的に合格しました。正直、あまり映画を観ていなかったので、キアロスタミ監督の存在も知らなかったんです。事務所の方からも、『すごいチャンスだよ!』と言われたんですけど、よくわからないまま撮影に入りました」

キアロスタミ監督の作品は、フィクションでありながらドキュメンタリー的な要素もふんだんに取り入れた唯一無二の作風。その特異な演出法は『ライク・サムワン・イン・ラブ』でも遺憾なく発揮された。

「台本がなくて、オーディションと一緒で『こんなことを喋ってほしい』みたいなことを言われて、それを撮っているんです。かと思えば現場に呼ばれるだけ呼ばれて、ずっと待たされて、『今日はもう帰っていいよ』みたいな日もあって、すごく謎だったんです。そういう状況だから、役作りどころか、どんな心境で撮影に行ったらいいか分からないので気持ちも作れない。どうやら、私が演じた明子はいつもイライラしている役だったので、そういう気持ちを自然と作るための演出だったんです。そこまで役者をコントロールできる監督ってなかなかいないですし、振り返ってみるとすごいなって改めて思います。完成した映画を観ると、日本が舞台で、日本の役者さんが演じているのに、日本映画とは明らかに違うんです。今でも謎の多い監督で、またお会いしたいなと思っていたんですが、2016年にお亡くなりになられて叶わなかったのが残念です」

コンスタントに話題のドラマや映画に出演する中で、昨年出演した『PICU 小児集中治療室』は強く印象に残っている。

「このドラマが決まるまでPICUの存在自体を知らなかったですし、実際にPICUを見学させていただいて、言葉を失うような緊迫感のある現場で衝撃を受けました。今回の『バツイチがモテるなんて聞いてません』もそうですけど、役者って一回一回の現場を経験することによって新しい世界が広がるし、知らなかったことを知ることができるし、出会わなかった人に出会えることができる。自分の人生も豊かになるから、ずっと続けていきたいですね」

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AUTHOR

猪口 貴裕


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