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UPDATE|2023/03/09

東出昌大がWinny開発者・金子勇役に挑戦「役作りをするというより、本人になりきる感覚」

東出昌大 撮影/山田健史



──現場の雰囲気はいかがでしたか。

東出 今の日本映画界は時間がないと言われることも多いですが、怒号が飛び交うようなことは一切ない、穏やかな現場でした。現代とは違う時代背景なので、当時の雰囲気をみんなで頑張って作っていったという感じです。現場に行って、監督と話し合いながら「この方が良いんじゃないか」と台本が変わることもありました。裁判で最終陳述をしゃべるシーンがあったんですが、最初の台本とは全然違うセリフなんです。裁判記録の中に、実際に弁護士の壇さんと金子さんで作った最終陳述用紙があったので、それを引っ張り出してきて、「絶対にこっちの方がいいです」と変えさせてもらうことになりました。

──作品を通して、東出さんは金子さんの人生に対してどのように感じましたか。

東出 金子さんの生家を訪ねたんです。金子さんが子どもの頃に、マイコンを触りたいがために、自転車で走って行った電気屋までの距離を車で走ってみたら、その遠さに驚きました。金子さんのお姉さまが「こんな距離を毎日通ってた」と言うんです。「マイコンを触りたい」という当時の童心を持ったまま、頂があったから登りたい、誰もまだ見ぬ地平に行きたいというようなピュアな方だったんじゃないかなと僕は思いました。「金子さんは誰の悪口も言わなかった」「不平不満も言わなかった」と聞きます。みんなから愛されていた、素晴らしい人物を演じられたなと思いました。

──ご自身の生き方に反映される部分もありますか。

東出 あると思いますね。最近は天然と言われるようになってしまっていますが(笑)、「金子さんになりたい」と思った二カ月があったから、僕自身の人間性にも影響を与えていると思うんです。僕も普段から人の悪口を言わないようにしようと思っています。

──専門用語を早口で言うシーンも多いですよね。かなり大変だったのではないでしょうか。

東出 原理を覚えないと自分のセリフにならないので、P2Pとはなんなのか、クライアントサーバ方式とはなんなのか、というような勉強は結構必要でしたね。

──この作品を世の中に届ける上で、東出さんが伝えたいメッセージとはどういったものでしょうか。

東出 見ていただければ、伝わるものは伝わると思います。でも僕、作品の完成が怖かったんですよ。「良い映画を作りたい」という思いは当たり前にあるんですが、「うまくいっているだろうか」という不安も同時にありました。でも出来上がった映画を見終わった時に、自分でも「良い映画になった」と思えたので、本当に多くの人に見ていただきたいと思います。

【後編はこちら】映画『Winny』主演・東出昌大が語るアナログな私生活「肉がなければ山へ狩りに、薪をひたすら割って」
AUTHOR

山田 健史


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