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UPDATE|2023/03/20

広瀬すず×永瀬廉『夕暮れに、手をつなぐ』方言から読み解く、空豆の人物像と未来への布石

『夕暮れに、手をつなぐ』(C)TBS


そして忘れてはならない、空豆の一人称「おい」。西郷どんを想起させる「おい」も鹿児島で使われる方言だが、今の若者はほぼ使わない。第1話で空豆が自分のことを「おい」と呼んだときは驚いたが、これも田舎に浸かってきた空豆の人物像を表す方言なのだと思えば腑に落ちる。

最近は地方出身でも、コテコテの方言を使う若者はあまり目にしないからこそ、空豆のキャラクターに違和感を覚えるのも納得できる。地方で生まれ育った女の子は、都会ではできるだけ方言を隠したいと思うものだ。しかし、同じ田舎出身なのに東京弁をしゃべる自分を捨てた母親への反発心もあるのか、空豆はあえて方言を話す。最初はそこに違和感こそ持ったものの、回を重ねるにつれ、その違和感は自然と薄らいでいった。

それは、空豆がただの野生的・行動的な方言女子ではないことが明らかになっていったからだろう。視聴者はいつの間にか空豆に思いを重ね、感情移入していく。もちろんそれは、広瀬すずの演技力も相まってのものだ。

思えば、『ロングバケーション』の葉山南にも同様の感情を抱いた。結婚式当日に婚約者が失踪してしまい、そのルームメイトだった男性と後日同居する、という設定からも、図々しさがうかがえる女性だ。その想像通りにサバサバしていて、思い込みが激しく、強引で、失敗も多い。しかし、話が進むにつれ、南への違和感が自然と薄らいでいった視聴者も多いのではないだろうか。

北川氏は、南の人物像に関して「あれ、今、ネットですぐ炎上して、ドラマ制作者側もネットの意見気にして、抑えちゃったと思うんですね」「何より私が怖くなって、萎縮してあのテンションでは書けなくなってたと思うんですよ」「よく書いたな、これって。SNSの目がないからだなあ、って」と、今月14日、Twitterにつづっている。

空豆も、南のように忘れられないヒロインとなり、このドラマは、ロンバケのように語り継がれる作品になるのかもしれない。空豆から放たれる“空豆語”や野生的な行動は、ドラマのヒロインとしてそれほどインパクトがあり、印象に残るものなのだ。

周りを振り回しながら、葛藤しながらも、成長し続けてきた空豆。その行動力やはつらつさは、自然と周りの力になっている。話が進むにつれて抱えているものが徐々に見え始め、ただの野生的な女の子ではないことも明らかになった。

14日に放送された第9話のラストは「やっとここまできた…」といった展開だったが、残りは21日に最終話の放送を残すのみ。空豆と音、それぞれの夢と2人の運命は、果たしてどうなるのか。

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