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UPDATE|2023/06/17

「アイドル現場は肩書きが通用しない祝祭的解放区」ノンフィクション賞記者・田原牧の “推し活”

田原牧と雨宮処凛 撮影/西邑泰和

格差・貧困問題に取り組み、メディアで積極的に発言をしている作家・雨宮処凛が、バンドやアイドルなどを愛でたり応援したりする“推し活”について深堀りするコラムシリーズ。2回目のゲストは「ジャスミン革命」を取材し開高健ノンフィクション賞をとった記者・田原牧さん。初期AKB48の“いかがわしい”魅力に取り憑かれ、ヲタ活をスタート。そして時が経ち、現在たどり着いたのはヴィジュアル系だった。アラブ世界を見続けてきたジャーナリストから見た、推しがいる世界とは? 文・雨宮処凛(前後編の後編)

【前編はこちら】「初期AKB48にはイスラム武闘派のアルカイダと同時代性がある」ノンフィクション賞記者・田原牧

【写真】推し活について語る、田原牧と雨宮処凛

AKB48にハマり、選抜総選挙や、宮澤佐江の握手会にも参加していたという田原牧さん。

しかし、そんなAKBから田原さんの心は離れていく。ただでさえ巨大産業だったところにさらに多くのスポンサーがつき、完全に手の届かない存在になったからだ。

そんな頃、職場の「古参ヲタ」にあるアイドルの存在を知らされる。ちなみにこのヲタ、田原さんが記者をつとめる新聞社の派遣社員なのだが、ヲタの現場では大幹部的存在。このように、現実社会の立場が逆転するところもオタ活・推し活の醍醐味だろう。現場では田原さんが「新規」でしかないという推し活下克上。

が、そんな大幹部も推しメン卒業によりAKBから離れることに。しばらくは抜け殻のように過ごしていたそうだが、そんな彼から「えらいもの見つけてしまいました!」と教えられたのがBiSHだった。

「まだブレイクする前でした。ライブに行ったらほんとにすごくて。元々のキャッチフレーズが『楽器を持たないパンクバンド』だからパンク色が強くて、最初の頃は来る奴全員モヒカンにしなくちゃいけない『モヒカン限定ライブ』があったり、同じ曲をひたすら繰り返すライブがあったり、ヤンチャだったんです」

田原さんの視線は演者だけでなく、ヲタにも注がれる。

「年齢層が幅広くて、若い人から60歳くらいのおじさんまで来てる。ライブではみんなが肩組んで歌ったりして、一体感がものすごくあった。なんか、初期の頃は暴動起きるぞ、みたいな危うさがありました」

しかし、そんなBiSHもブレイクして巨大になるにつれ関心が薄れていく。


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