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UPDATE|2023/06/17

「アイドル現場は肩書きが通用しない祝祭的解放区」ノンフィクション賞記者・田原牧の “推し活”

田原牧と雨宮処凛 撮影/西邑泰和



「私がAKBやBiSHが好きだった時も、ライブの空間、雰囲気が好きだったのね。それはどんなアイドルでも演者だけでは作れなくて、ヲタやバンギャが作ってて、そっちが主力なのよ。それが巨大化すると崩れるからつまんなくなるわけだけど、緑川さんはそれをすごくよくわかってるんだと思う。実はけっこう革命家なんじゃないの?」

高校時代に三里塚という「革命の学校」に通い、以後、アラブを彷徨い、エジプトのジャスミン革命を経験した田原さんに「革命家」と言わしめるとは今のV系も捨てたものではない。ちなみに緑川氏のYouTubeには「平伏せ、革命を刮目せよ」という言葉がある。

「今までのヴィジュアル系を明らかにひっくり返そうとしてる気がする。実はそっちの方が過激なんだって。子ども限定ライブなんて普通は考えられない。ものすごい戦略家だと思う」

田原さんは近々誤算のライブに行くことを目標としているそうだが、そんな田原さんにとって推し活の現場は「隠れ家」的な場のようだ。

「昔はそういう空間ってたくさんあったんだよ。自分がどこの誰とか肩書きとかが関係ない、肩書きが通用しない空間。だけど、そんな空間はどんどんなくなって、だから生きづらいんだと思う。でもアイドルオタクの空間とかには、損得関係なく情で繋がる、みたいなのがまだある。そういう祝祭的解放区が必要だと思う」

祝祭的解放区。私もまさにそんな現場に居合わせることによって、なんとか生きてきた気がする。

ちなみに田原さんはアラブに詳しいわけだが、偶像崇拝が禁じられているイスラム圏では推し活とかはどうなっているのだろう?

聞いてみると、「イスラムっつったって解釈多様だからさ」とのこと。エジプトやレバノンなどは基本的にゆるいらしいが、サウジアラビアは厳しめ、しかし最近は開放政策をとっているという。

そんなイスラム圏でヴィジュアル系がライブしたらどうなる? と尋ねると、メイクをしている男性が同性愛と見られると厳しいようだ。イスラム圏では同性愛は重罪、場合によっては死刑である。

ということで、田原さんが誤算のライブに行く日を、私は勝手に楽しみにしている。

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