「名作映画」と聞いて、まず真っ先に何が思いつくだろうか。『ニュー・シネマ・パラダイス』『天使にラブ・ソングを』『スタンド・バイ・ミー』『タイタニック』『ショーシャンクの空に』など、多くの人が80~90年代の作品を思い浮かべるのではないだろうか。
【関連写真】マイケル・キートンのバットマンも登場、『ザ・フラッシュ』場面写真実際に映画ファンの間でも、名作映画として名前が出るのはひと昔前の作品ばかり。もちろん2000年以降にも名作と評される作品は数多くあるが、「80~90年代の映画=名作」のイメージがあまりにも強すぎる。それは一体なぜなのか、大きな理由として80~90年代の作品が「古典」となっていることが挙げられるかもしれない。
古典とは過去に作られ、今もなお文化的価値の高いものを指す。そして80~90年代に作られた作品は、今の映画の「規範」、つまりは「お手本」となっているケースが多い。
1982年公開の映画『ブレードランナー』がそれまでのSF概念をガラリと変えたように、『E.T.』にインスパイアされた作品が多くあるように、昔の作品は後の世代に多大な影響を与え、映画製作者や映画ファンにとっての一つの模範となっている。
だからこそ令和になった今でも映画『タイタニック』が再上映されたり、いまだに『トップガン』のテレビ放送でネット上が沸いたりするのだろう。映画制作にまつわる見本と模倣の構造が、80~90年代の作品を名作たらしめているといえる。
ただ古典となっている映画は、80~90年代に限った話ではない。80年代以前に作られた作品にも、当然お手本となる映画は数多く存在する。それ以上に、80~90年代は社会的・文化的な変革が進んだ時代という点が大きく関係しているのかもしれない。
80年代、世界では「サッチャリズム」や「レーガノミクス」といった経済政策が台頭し、世の中全体がバブルの恩恵を受けていた。さらにCGをはじめとした最新の映像技術も発展し、多様な表現と実験精神が映画界を賑わせ始めたのもこの頃だ。
当時の政治的な動きや社会的な変化が映画作品にも大きく反映され、結果として数々の名作が生まれたのだろう。その時代の背景を描いた作品は、現在でも当時の空気感を感じ取ることができ、観る者に深い共感や感動を与えている。