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UPDATE|2023/07/21

『ABEMA Prime』チーフプロデューサーに聞く、異色のニュース番組の作り方

(C)Abema TV, Inc.

地上波テレビを見慣れた視聴者は、「これが本当にニュース番組?」と驚くかもしれない。新しい未来のテレビ「ABEMA」のニュース専門チャンネル「ABEMA NEWS」で平日21~23時に生放送されている『ABEMA Prime』のことだ。2023年7月3日(火)の放送では、本田圭佑が一夜限りのMCを務めたが、番組はスタジオではなく六本木の居酒屋から生放送をスタート。スタジオに戻った後も本田はほろ酔いモードで自由にトークを繰り広げた。

【関連写真】7月3日には本田圭佑がMCを務める特別番組も、六本木の居酒屋スタートで話題に【3点】

普段も番組の中心はトーク。特定のテーマに沿ってEXITや安藤美姫、益若つばさといった他のニュース番組では見かけない出演者がトークバトルを展開する。そのお題も独特だ。「飲みニケーションの必要性」「コロナ収束で再開、修学旅行の意義」「TPOにあった髪型とは?」「組体操で裸になるのは?運動会の当たり前を考える」など、いかにも人によって意見が割れそうなものばかり。一体、どういった基準で内容を決定しているのか? 番組チーフプロデューサーの郭晃彰氏に話を伺った。

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「そもそもうちの番組の場合、企画会議がないんですよ。ネタ出し用のSlackがあって、ADから放送作家の方までスタッフはそこにポンポン思いついたテーマを書き込んでいく感じです。あとはTwitterとかで跳ねているネタを取り上げることもありますね。でも、一番多いのは出演者の方と楽屋でおしゃべりする中で生まれるパターンかもしれない。レギュラー陣が60人もいるから、それぞれ得意分野も違うわけです。『これ「ABEMA Prime」でやったら面白いんじゃないですか?』とか提案してくれて、それがそのまま番組で扱うテーマになったりしています」

意識しているのは、時事ネタを扱う際も必ず“ひとひねり”を加えること。たとえば先日、岸田文雄首相の長男で、首相秘書官を務めていた翔太郎氏が辞職した。親族の忘年会で官邸で写真を撮っていた過去が発覚したからだ。これを「けしからん!」と糾弾するのは簡単だが、“親バカのプラス面”にも光を当てたら面白いのではないかと『ABEMA Prime』は考えた。子供の失敗に対して「お前は大丈夫だ」と親がかばい続け、社会的に成功したパターンだってあるに違いない。この発想が、番組に他のニュースと違った切り口を与えている。

現在、『ABEMA Prime』で扱うコンテンツは、オウンドメディア「ABEMA TIMES」で活字化され、ニュース配信もされている。ネットニュースで番組のことを知る人も確実に増えてきているという。こうした流れに対し、最初は郭氏も「映像を作っている立場の人間からしたら、テキストではなく、動画で観てほしい」という気持ちで抵抗感を抱いていた。しかし蓋を開けてみるとライターチームが想像以上に優秀だったこともあり、放送後のコンテンツの広がりや活字メディアでの二次消費に意義を見出し、全面肯定派に転向したのだという。

「すごく自由にやらせてもらっていると思いますよ。番組には段取りらしきものすら存在しないですし。一応、台本はあるんですよ。でも事前に決められているのは、オープニングのトーク内容くらい。あとは進行の平石直之アナがアドリブ的にファシリテーションをしている。もちろん『ゲストやニュースを専門的に解説する人が、こんなご意見をお持ちですよ』という最低限のガイド的なものはあります。ただ、演者さんに対して『こういう方向でコメントください』とかお願いすることは一切ないです。本番前に1人につき20分くらい雑談めいた打ち合わせはするものの、わりと出たところ勝負な感じでやっていますね」
AUTHOR

小野田 衛


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