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UPDATE|2023/08/09

「クレヨンしんちゃん」の最新映画は初の3DCG、大根仁監督が現代社会の”闇”を描く

(C)臼井儀人/しん次元クレヨンしんちゃん製作委員会

「クレヨンしんちゃん」の劇場版第31弾にして、番外編となるのが、8月4日に公開された『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』である。アニメシリーズの劇場版ながらも原作を意識したものとなっており、しんちゃんの服も原作と同じ黄色っぽいオレンジ色で、キャラクターの顔もどことなく原作寄りだ。

【写真】『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』名シーン

今作は、2001年のテレビスペシャル内で『エスパー兄妹 今世紀最初の決戦! 』としてアニメ化もされている原作エピソードを下敷きとしている。

それをただ最先端技術でリメイクしたということではなく、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018)やドラマ『エルピス-希望、あるいは災い-』(2022)などで知られる演出家、映画監督の大根仁によって、大きく脚色されており、オリジナル要素が強いものとなっている。

劇場版シリーズとしては初で、おそらく今回限りになるであろうフル3DCGアニメーションというスタイルを活かしたダイナミックなアクションシーンの数々は必見だが、そういったダイナミックな画を通常時でもやってしまうのが「クレヨンしんちゃん」の劇場版シリーズでもある。あえていつものスタイルで今作を観たかったという気持ちもあったりして、そこは複雑な心境にもなる。

もともと劇場版の「クレヨンしんちゃん」は、子供向けらしからぬ社会問題を取り入れた作風が大人のユーザーも魅了してきたわけだが、近年はマンネリ化を避けるためにもアニメ畑の監督や脚本家だけではなく、実写映画の監督や脚本家を起用する動きが目立ってきている。

今作の大根仁もそうだが、『クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』(2020)では、『死刑にいたる病』(2022)や『夜、鳥たちが啼く』(2022)といった、人間の脆さや不器用さを描くことを得意とする脚本家の高田亮を起用している。

実際に『クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者』は、デジタル化が進む現代の子どもにおいての”自由”とは何かを問いかけた作品で、デジタル化が決して悪ではなく、互いを理解し、共存することも必要という深いテーマを描いていた。

アニメ映画に実写映画の監督・脚本家を起用する流れは、「クレヨンしんちゃん」だけではなく、「ドラえもん」や「名探偵コナン」のいわゆる”東宝御三家アニメ映画”にもあって、あくまで子ども向けだからといってマンネリ化や妥協ができないという意思のもとに制作されていることから、毎回油断できないクオリティに仕上げてくるのだ。


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