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UPDATE|2023/09/18

フジテレビの本気を見た、社会問題に切り込む新感覚ドラマがついに映画化『ミステリと言う勿れ』

(C)田村由美/小学館 (C)2023 フジテレビジョン 小学館 TopCoat 東宝 FNS27社

「月刊flowers」で2018年から連載中の田村由美による同名漫画を原作とし、菅田将暉が主人公・久能整を演じたフジテレビ系ドラマ『ミステリと言う勿れ』は放送当時から話題を呼んだ一方で、謎を残した最終回に対して続編や映画化を熱望するファンが急増した。そんな声に答えるかように制作され、ドラマ版とも直結する待望の続編にして、原作でも人気の高い「広島編」を映画化した『ミステリと言う勿れ』が9月15日から公開されている。

【写真】『ミステリと言う勿れ』主演の菅田将暉

ミステリー作品としては、ある程度、先の読める展開とはなっているし、犯人は前半で何となくわかるのだが、今作の魅力はタイトルの通り、ミステリーとは別のところに存在している。

つまり謎解き要素よりも、その事件のなかにいる人々の心を”説いて”いく作品となっているということ。幼少期の体験や、犯罪に巻き込まれたことによって、親世代が勝手に作り出した概念のなかで生きていくしかなかった人々のアフターケアを描いていることだ。

本作は、雑談から始まり、そもそもの疑問を投げかけ、そこから生まれる対話によって結果として事件解決が後に付いてくるという斬新なスタイル。脱力系主人公がつぶやく言葉が、ことごとく現代人に突き刺さるものとなっている。脱力系によって説教臭くなっていないというのも重要な点だ。

世の中に蔓延る「普通」「常識」「一般的」といったような、あやふや過ぎる固定概念に対してそもそもの疑問を投げかける重要性も教えてくれる。

誰もが感じ、常日頃思っている疑問なのに、いつしか「それが普通だから」「仕方ないから」という雰囲気や風潮のなかで処理されてしまい、勝手に納得してしまう。納得しなくてはならない環境に自分を追い込んでしまう。

そんな世の中の”変”な部分に「僕は常々思っているんですが~」と、場の空気に流されず、遠慮せずにツッコミを入れるスタイルは、もはや現代人の代弁者ともいえる存在でもあるのだ。

それでいて、「親の脛をかじって生きている」と言いながらも、自分自身も過去に何かトラウマを抱えている主人公の謎も断片的に明かされていく。そんな過程も、目が離せなくなる需要な要素のひとつだ。

映画版に先駆けて9月9日に放送された番外編となるスペシャルドラマ版でも相変わらずの整節が炸裂したのだが、気になるのはドラマのシーズン2がいつになるのかということ。シーズン2がありそうではっきりしない部分こそが今作の一番のミステリー要素なのかもしれない……。

また近年、フジテレビが映画に力を入れ始めていることを改めて感じさせるクオリティに仕上がっていることにも目を向けてもらいたい。


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