かと思えば、コメディ的な側面でも松下演じる春木は活躍している。
4人の主役が一同に会するシーンでは、構図としては春木対3人という形となり、喜劇のような会話劇が繰り広げられる。一人で住む住宅の前で、早口で、お笑いのツッコミのようなテンポで訂正を続ける姿は、コメディでも輝けるという松下の新境地を見た気がした。
2話でも、一度春木家に集えば、一気にドラマは喜劇へと変わり、くすりと笑える会話劇の中で松下は確かな存在感を放つ。
もっとも、松下の「受けの芝居」で輝くという持ち味も失われてはいない。春木が深雪夜々(今田美桜)の勤める美容室に来店したシーンは1対1でのみ話が進み、まだ春木のキャラクターがそれほど明かされていない中で、言葉の端々からその輪郭をくっきりと浮かび上がらせた。
そんな松下演じる春木はどこか切なく、弱々しく、報われない人間にも思えてしまう。だが、だからこそ2話で発された「言っちゃダメなことはたくさんあるけど、思っちゃダメなことはないです」という言葉はギャップの大きさから重みを感じる。新たな魅力を見せる松下と、春木椿から今クールは目が離せない。
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