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UPDATE|2023/11/02

「オー!マイキー」のクリエイターが辿り着いた心境地はホラー・ファンタジーだった『唄う六人の女』

(C)2023「唄う六人の女」製作委員会

登場人物が全てマネキンで構成されたシニカルでシュールなシットコム、東海地区なら「ファニチャードーム」、最近は「濃いめのレモンサワー」のCMなどでもお馴染みの「オー!マイキー」のクリエイターとして知られる石橋義正。『狂わせたいの』(1997)や『ミロクローゼ』(2012)などの劇映画も手掛ける、気鋭の作家の最新作『唄う六人の女』が10月27日から公開中だ。

【写真】竹野内豊×山田孝之W主演『唄う六人の女』場面写真

『唄う六人の女』は、前作の『ミロクローゼ』からは約11年ぶりの新作映画となる。『ミロクローゼ』は、山田孝之が様々な個性的キャラクターを演じるなど、「オー!マイキー」にも通じるシュールなコメディ作品であった。ところが今作はコメディ的な要素が全く無いとは言わないが、全体的に怪奇性も高いことから、ホラー・ファンタジーという新境地に挑戦している。

竹野内豊演じる主人公・萱島が自分を捨てた父親の残像に折り合いをつけるために訪れた地で奇怪な森に迷い込む。海外ホラーでは定番の『サランドラ』(1977)や『クライモリ』(2003)のような、いわゆる「田舎ホラー」的ジャンルものへのミスリードによって観客の視点を迷子にさせ、そこに美しくも恐ろしい謎の女性たちを登場させていく。

そんな女性たちの立ち振る舞いが一貫して奇怪的、もしくは野生生物的であり、それほど変化するわけではないが、萱島の視点を通して、印象が前半では恐怖、後半では哀しみへと大きく変化させる巧妙な脚本術が活きている。

海外の「田舎ホラー」の場合は、保守的な地方や土地を奪われた先住民への偏見に対してのメタファーが含まれていたりするし、日本でも「〇〇村」というようなタイトルが付いているとホラーを連想する。

今作もそういった側面を描きつつも、そこにファンタジーが加わってことで、奇妙でサイケデリックな世界観でありつつも、「人間が奪ってしまった環境や生態系」といったメッセージ性は、あえて直球でしっかりと描かれている。特に70・80年代版のアニメ版「ゲゲゲの鬼太郎」に登場する妖怪たちに込められたメッセージ性が連想され、鬼太郎のエピソードを実写で観ているようでもあった。


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