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UPDATE|2024/01/25

【何観る週末シネマ】誰かの不幸の上に誰かの幸せは成り立っている、奇抜な日本製ホラー『みなに幸あれ』

(C)2023「みなに幸あれ」製作委員会

この週末、何を観よう……。映画ライターのバフィー吉川が推したい1本をピックアップ。おすすめポイントともにご紹介します。今回ご紹介するのは、1 月 19 日(金)より公開されている『みなに幸あれ』。気になった方はぜひ劇場へ。

【写真】人間の存在を揺るがす根源的な恐怖……『みなに幸あれ』場面写真【6点】

〇ストーリー
看護学生の孫は、ひょんなことから田舎に住む祖父母に会いに行く。久しぶりの再会、家族水入らずで幸せな時間を過ごす。しかし、どこか違和感を覚える孫。祖父母の家には「何か」がいる。そしてある時から、人間の存在自体を揺るがすような根源的な恐怖が迫って来る...。

〇おすすめポイント
「誰かの不幸の上に、誰かの幸せは成り立っている」という世界構造そのものをホラーテイストで、そして極端なほどに誇張して描いた作品。

奇怪な老人からの恐怖を描くという点では、M・ナイト・シャマランの『ヴィジット』(2015)を少し思い出す人もいるだろうし、王道の田舎ホラー的入り口は王道的に感じるかもしれない。

ところがその正体を知り、今作が描いていることは、私たちの周りごく自然なかたちで存在する、かなり身近なことだと知ったとき、驚愕と同時に今作が社会派ホラーであることに気付くはずだ。

身近なことに例えるとすれば、大学受験や就職試験も同じだ。誰かが受かれば、誰かが落ちる。これは誰かの不幸にうえに自分が立っていることになる。

しかし、当人はそんなことを考えないし、考えていられない。つまり、それを考えてしまい、ふと視点を変えると、人生のなかで知らないうちに何人かは不幸にしているかもしれないことに気付くのだ。

そんなことを考え始めてしまうときりがないほどに、この世界は誰かの不幸のうえに成り立っていることだらけなのだから、考えないようにして生活しているわけなのだが、そういったものが、ある目に見える「何か」として、この世界に存在していたら……。というものを描いたのが本作である。

「ハロウィン」シリーズのブギーマンが、不安や恐怖といったものの、目に見えるメタファーとして存在しているように、その「何か」がどう表現されているのかにも注目してもらいたい。

社会派なテーマに反してシュールでコミカルな部分もあるし、B級ジャンルホラー色もあるなど、様々な側面から制作者の奇抜な個性と才能を感じないではいられないだろう。

(C)2023「みなに幸あれ」製作委員会

〇作品情報
主演:古川琴音
出演:松大航也 犬山良子 西田優史 吉村志保 橋本和雄 野瀬恵子 有福正志ほか
原案・監督:下津優太 総合プロデュース:清水崇 脚本:角田ルミ 音楽:香田悠真
主題歌:「Endless Etude (BEST WISHES TO ALL ver.)」 Base Ball Bear
製作:KADOKAWA ムービーウォーカー PEEK A BOO
制作プロダクション:ブースタープロジェクト
配給:KADOKAWA
2023/日本/89 分/5.1ch/ビスタ/カラー
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/minasachi/
2024 年 1 月 19 日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

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