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UPDATE|2024/03/08

モモコグミカンパニーが『解散ノート』を書いた理由「書けなかったら、この世界にいる意味がない」

モモコグミカンパニー 撮影/西邑泰和

人気絶頂の中、惜しまれつつ2023年6月29日に解散したガールズグループ「BiSH」。メンバーの一人であるモモコグミカンパニーが、解散宣告された日から、東京ドームを超満員にしたラストライブまでの3年半の日々を赤裸々に綴った『解散ノート』(文藝春秋)が話題を呼んでいる。これまで小説2作、エッセイ2作を刊行し、文筆家としても評価の高い彼女が、なぜ解散ノートを書こうと思ったのか。その胸の内と、解散後の今を語る(前後編の前編)。

【写真】モモコグミカンパニーの撮り下ろしカット【11点】

2019年11月22日、事務所にBiSHメンバー全員が集められた。そこで彼女たちの所属する「WACK」代表の渡辺淳之介から、「東京ドームで解散」と突然の解散を告げられた。今は上り調子だが、この状況がいつまで続くか分からない。だらだら続けるよりも2,3年後に解散か、活動休止を発表するほうがいいのではないかという、あくまで本人たちの意思を尊重する提言だったが、異を唱える者は一人もいなかった。

「渡辺さんから解散という言葉が出た日、家に帰って、まっさらなノートの表紙に“解散ノート”と書きました。もともと私はテーマ性を持たせて日記を書くのが好きで、瞬発的に出たタイトルでした。他人に見せることのないノートは小学生の頃から書いていました。昔から自分の思いを書く場所が必要だったんです。

いつもは途中で投げ出してしまうんですが、解散ノートは3年半に渡って書き続けました。ちゃんと書き切ったのは初めてのことです。BiSHの活動が忙しいのに加えて、後半の1年半は小説を始め、書くものが多くて、最後のほうは気力で書いていました」

途中からキーボードに移行したものの、ノート1冊を埋めるまでは手書きにこだわった。

「小説などの長い文章じゃなければ、基本的に手書きです。インターネット上に文章を残していると、いつ消えちゃうか分からない。それに指先を動かすと、頭の中が整理されて、アウトプットになるんです」

解散ノートを書くことは、自分へのご褒美でもあった。

「解散を突きつけられて、これから先、どう感じて、どんな人生を歩んでいくのか。自分でも解散後の人生が予想もつかなかったので、それを客観視して書くのが面白いなと思ったんです。誰かのためではなく、自分のために書く。書けなかったら、この世界にいる意味がないとまで思っていました。

作家になりたい。作家でありたい。その先の人生を書かなかったら、もう表には出なくていいと覚悟を決めて書いていたので、それが解散ノートを書き切る原動力になりました。途中からは同時進行で小説も書いていたので、解散ノートは息抜きというか、自分と向き合うための時間にもなっていました」
AUTHOR

猪口 貴裕


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