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UPDATE|2024/06/15

『虎に翼』で考える”生きづらさ”の解決策、鍵を握るのは「100年先」への積み重ね

伊藤沙莉主演のNHK連続テレビ小説『虎に翼』

思わずため息を漏らしてしまう瞬間がある。連続テレビ小説『虎に翼』を見終わった後である。番組最後に”わたしの翼”の写真が流れているころには机に突っ伏しているときすらある。漏れ出るため息は上手く言葉になってくれない。軽々しく何かを言えない状態になってしまうほど、『虎に翼』には一ミリたりとも隙がないのである。

【関連写真】伊藤沙莉演じる寅子、ほか『虎に翼』場面カット【5点】

今作には、「適齢期の女性が結婚をしないのは地獄行き」から始まり、女性特有の身体の変化や”女性らしさ”の押し付けによる生きづらさ、結婚・出産でキャリアを諦めなければならない理不尽さ、仕事に励めば視聴者に「子どものことは?」と突っ込まれる矛盾さ…とにかく日頃感じている小さなモヤモヤがこれでもかと詰め込まれている。

寅子や寅子の周りの女性たちが抱える悩みを見ていると、自分が日頃友人と共有している悩みとさほど変わらないことに気づく。「転職先の面接で結婚の予定があるか聞かれた」「育児休暇を取ったら社内のポジションが下がるかもしれない」「生理痛で仕事を休むのが気まずい」…特に気に留めることなく話していた話題も、ドラマを見ていると「これって”はて?”と思っていいのかも」と思い知らされることもあった。

約100年前と同じ悩みが生まれるほど社会の風潮が変化していないことに驚くが、今から100年経っても同じような悩みは存在しているだろう。なぜなら”生きづらさ”は千差万別で、さらには「自分の生きづらさには敏感でも、人の生きづらさには鈍感」である人が大半だからだ。

恥ずかしながら、私も恐らくそのうちの一人である。『虎に翼』で描かれてきた女性の生きづらさには首がとれるほど頷いていたくせに、寅子が弟・直明に「一家の大黒柱になんてならなくていい」と言い放った場面で初めて男性が抱える生きづらさに気が付いた。「長男だから家を継がないといけない」だとか「夫の方が妻より稼ぐべき」だとか、いつの間にか植え付けられていた固定観念によって、誰かを傷つけたこともあったかもしれない。

現段階で政治を担っている人の大半が男性であるのだから、男性たちが自分の生きづらさを改善するように働きかけるのは当然だろう。しかし、それでは女性の生きづらさは加速する一方だ。悲しいかな物語の中で生きづらさの解決法は示されていない。ではどうすればこの”生きづらさ”がマシになるのか。思い悩んだ末、「100年先を見据えて明日を生きるしかない」という考えに至った。

AUTHOR

音月 りお


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