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UPDATE|2021/02/05

日本で最も恐れられる雑誌・『週刊文春』を作った2人の天才

スクープの裏側を追ったノンフィクション『2016年の週刊文春』(光文社)


──それもすごい話です。柳澤さんから見た新谷編集長の人物像は?

柳澤 明るくて人なつっこくてシティボーイで、あと、ものすごいおしゃれ。大学時代にブルックスブラザーズで何年もアルバイトしていたなんて、文春の社員で他にいませんよ。新谷くんの人間性を知るうえで重要なのは、春画事件ですね。

──『2016年の週刊文春』でも書かれていましたが、2015年10月、春画をグラビア記事に掲載したことが「配慮に欠けた」として、会社から新谷編集長が3ヵ月の休養を命じられました。

柳澤 このとき、編集部員たちは全員「俺たちの親分になんてことをしてくれるんだ!」と憤ったんです。新谷くんの統率力は凄くて、編集員はみんな「新谷さんについていきます!」って忠誠を誓う感じ。今は紙媒体が瀕死の状態で、広告収入も減る一方。どんなスクープを飛ばしても、かつてほどの部数は出ない。厳しい状況下で、なんとかしようと誰よりも踏ん張っていたのが新谷くん。部下にしてみたら「新谷さんを男にしたい」という気持ちが強い。

──抜群の人望があるんですね。

柳澤 雑誌を作ったことがある人ならわかってもらえると思うけど、編集部の空気って必ず誌面に反映されるんですよね。ギャンギャン、ワイワイと作っている現場の熱量が文春砲に繋がっているのは間違いない。凄い雑誌をおもしろく作ろうぜ、という空気を作るのが抜群にうまい。

──紙媒体の『週刊文春』を総合週刊誌トップにした新谷さんが、率先して『週刊文春デジタル』『文春オンライン』といったウェブ展開を進めていることにも驚かされます。

柳澤 トップを走っていても、新聞雑誌の全体が落ちているから、収益はどんどん下がっている。「今のままではマズい」という強烈な危機感を誰よりも持っていたのが新谷くん。新谷くんみたいなタイプは、銀行だろうが商社だろうが政治家だろうが、どこでもトップになる。引き抜きの話だってたぶんあったと思いますよ。いまや文春の社員は高給取りとはいえませんから。でも、新谷くんは自由で明るい文藝春秋という会社を愛しているんです。自分を作ってくれて、楽しい仕事をさせてくれたのは文春だから、今度は恩返しする番だ、という使命感を持っているんです。
AUTHOR

小野田 衛


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